中央自動車道・笹子トンネルの崩落事故は9人の死者を出す大惨事となり、全国的に古い建造物の危険性が指摘されているが、危険なのはトンネルだけではない。
関西大学社会安全学部教授で社会安全研究センター長を務める河田恵昭氏は、一番事故が心配なのは、橋だと指摘する。
「橋は、設計時にどれぐらいの交通量があるかを予測・想定して造られていますが、どの橋も通過交通量が当初の想定を大幅に超えている。だから耐用年数が設計どおりにはもちません。一番怖いのは、設計荷重を上回るトラックが何回も走ることで、疲労破壊が引き起こされる可能性があることです」(河田氏)
国土交通省によると、全国に15万余りある橋のうち、築50年を超える橋は、現在1万5000か所あるが、10年後には約4万か所にも達するという。
東洋大学経済学部教授で、インフラ老朽化問題の第一人者の根本祐二氏は語る。
「今年4月には静岡県浜松市にある原田橋というつり橋が、ワイヤーが切れる恐れがあるということで通行止めになりました。天竜川にかかる橋で、それを迂回するとなると1時間以上かかる重要な橋ですが、生命の安全のほうが大事ということで使用停止にし、最終的には架け替えるという声明を市長が出しました」
老朽化を見越して危険を未然に防いだわけだが、同様に不安材料を抱えた橋は他にもある。
例えば、徳島県徳島市の吉野川大橋は今年1月に路面下の鉄板を補強している部分に240か所もの亀裂が見つかった。また、栃木県足利市の中橋や、神奈川県平塚市の花水川橋などは、架け替え工事が検討されている。このような橋は日本中に多くあるのだ。
※週刊ポスト2012年12月21・28日号