衆議院選挙戦は中盤に差しかかっている。政策の争点はいろいろあるが、原発・エネルギー政策を取り上げてみよう。新聞を読んでいると、脱原発をめぐって各党の意見は鋭く対立しているように見える。ジャーナリストの長谷川幸洋氏がその主張を分析する。
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まず日本維新の会である。創設者の橋下徹・代表代行は当初、脱原発を強く訴えていた。ところが石原慎太郎・前東京都知事と一緒になってから怪しくなってきた。代表の石原は「脱原発を目指さない」とはっきり語っている。それはそうだろう。石原はかねて核武装のシミュレーションも唱えてきた。それなら核燃料サイクルの中止も容認できるわけがない。
橋下はどうするのかと思ったら「既存原発は2030年代までにフェードアウト」という話も「議論のたたき台であり公約ではない」と後退した。橋下は石原に押し込まれている。
そもそも「既存原発をフェードアウト」だったら、それだけで脱原発にはならない。40年廃炉原則を守れば、何もしなくても既存の原発が消えていくのは当然である。問題は新設や増設、入れ替えなどを認めるかどうかなのだ。ところが、公約はそこに触れていない。
たとえば、建設を再開した電源開発・大間原発について2018年の稼働を認めるなら、40年後の2058年まで原発はなくならない公算が高くなる。このあたりが不明である。
日本未来の党はどうか。ここは第3極の中でも先鋭的な脱原発派とみられている。Facebookに公開された「卒原発カリキュラム」をみると「どんなに遅くとも10年後には完全に原発から卒業する」と目標を掲げた。当初3年間を「未来への助走期」と位置付け、大飯原発の即時停止や原発の新増設禁止を公約した。
注目されるのは使用済み核燃料の総量規制実施である。使用済み核燃料は目下、捨て場がない。そこで総量を規制すれば、おのずと原発は止める以外になくなる。しかし原発を止めると、六ヶ所村で再処理している青森県は「もう使用済み核燃料を引き受けない。元の場所に返す」と言い出す。
原発を止めるのに使用済み核燃料を引き受ければ、青森県が核のゴミ捨て場所になってしまうからだ。結局、真の問題は核のゴミ捨て場所をどうするかなのだ。脱原発を現実論にするには、その解を見出す必要がある。いくら止めると言ったって、青森県にゴミの後始末を押し付けるわけにはいかない。国民が納得できる捨て場所を見つけるには3年くらいはかかるだろう。
そこで自民党の公約をみると、ここは「3年間、最大限の再生可能エネルギー導入と省エネを推進する。原子力規制委員会の判断を優先して再稼働を順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指す」という。動かせる原発は動かすが、止める可能性もあるという立場だ。この点は私も出演した12月1日のテレビ朝日系列『朝まで生テレビ!』で世耕弘成・政調会長代理が確認した。
こうみてくると、私には「未来も自民も似たようなものじゃないか」と思えてくる。いま結論を持ち合わせていないから、3年間議論すると言っているのだ。
そうだとすると、脱原発を目指す立場から見渡しても「どの党がゴミ捨て場所を見つけて国民合意を取り付けられるか」が真の判断基準になる。難問から目をそらさずに挑戦するのか、それとも口だけなのか。有権者はそこを見極めねばならない。(文中敬称略)
※週刊ポスト2012年12月21・28日号