「第三極」がキーワードとなっている今回の衆院選。その第三極のなかで、特に「反原発」を軸としているのが、日本未来の党だ。国民の生活が第一を解党して合流した小沢一郎氏が重要な舵取り役となっているといわれる日本未来の党、その公約はどういうものなのか。そして、未来の党が選挙戦に躍り出た意味とは…? 経済アナリストの森永卓郎氏が分析する。(『メルマガNEWSポストセブンVol.43』より抜粋)
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日本未来の党に関しては、乱立していた脱原発政党の核ができたと評されている。しかし、本質的には、右派ばかりの戦いだった選挙戦に、ようやくリベラル勢力の受け皿ができたと理解すべきだろう。日本未来の党が発表した公約では、子供1人に中学卒業まで年間31万2000円分を支給するとした。月額に換算すると2万6000円で、その額は2009年に民主党が作ったマニフェストと同額だ。その他、税を財源とする最低保障年金を導入するなど、社会政策の骨格は2009年の民主党マニフェスト、すなわち小沢マニフェストとまったく同じなのだ。どうせなら、高速道路無料化も入れてくれれば、完全に同じになっただろう。
日本未来の党への批判はいくつもある。まず、嘉田由紀子代表が滋賀県知事を続けながら、政党の代表を物理的に務められるのかということだ。しかし、これは大丈夫だ。国政は小沢一郎氏が仕切ることになるからだ。すでに選挙戦略では小沢氏が大きな役割を果たしている。
もうひとつの批判は、国政経験のない「新人」に国政を任せられるのかという点だ。だが、これも小沢氏が仕切るのだから問題はない。
注目すべきことは、これで第三極の戦いが、日本維新対未来という構図になったということだ。これは、実質的に石原慎太郎対小沢一郎の戦いとなる。石原慎太郎氏は、自民党国会議員時代、清和会に所属していた。つまり福田派だ。小沢一郎氏は田中角栄元総理の直系の弟子だ。つまり、第三極のなかで、ふたたび角福戦争が始まったのだ。リベラル対保守、親中対親米の戦いなのだ。
結局、政策対立というのは、リベラルと保守というところに収斂せざるを得ないのかもしれない。この対立をもう50年もやっているのだから。