iPhone 5やiPad miniの発売があった今年、振り返れば“スマホかタブレットか、いや、やはりウルトラブックだ……”など、選択肢と比例して迷いも増えた。用途ごとの利便性を追求した結果として2台、3台持ちになった人も多いようだ。さらに悩ましいのがそうしたツールの通信手段。スマホなどでPCのインターネット接続ができる「テザリング」が話題となり、通信費の基本料一本化などを考え、使っているモバイルルータの解約を考えた人も少なくないだろう。
「“テザリング”の登場に、モバイルルータ関連企業は焦ったでしょうね。しかし世界全体でみると、テザリングができる端末を持ちながら活用している人は1.5%しかおらず、すぐにテザリングがモバイルルータに影響を与えるとは言いにくい状態です。テザリングは出先から急にメールを送るなど、あくまで緊急時に便利な機能です」と語るのはケータイジャーナリストの石川温氏。
テザリングに一本化が難しい理由はまず、バッテリーの問題が大きい。iPadやiPad miniにもテザリング機能があり、バッテリーが少し大きい分、使える時間を確保できるかもしれないが、スマホでのテザリングでは、バッテリーがもたないのだ。
もうひとつは速度制限。以前も「Wi-Fiルータ実効速度 ポイントは『エリアと速度制限の有無』」の記事で紹介したが、高速データ通信の場合は一定量のデータ通信を行なうと、自動的に速度を制限するため通信速度がガクンと下がる。例えばドコモのXiの場合は月7GBで、それを超えても同じ速度で使用したい場合には、別途料金がかかる。通常のスマホ利用だけでも、それなりのデータ通信をしている上に、テザリングでもデータ通信を使用するとなると、すぐ速度制限がかかることになるだろう。
逆にルータを上手く活用する方法として速度制限のないサービスを展開しているWiMAXなどを利用し、スマホのデータ通信はできるだけルータを通して、スマホ本体のデータ通信量を“温存する”というのも賢い選択のひとつだ。
ちなみにWiMAXを提供しているUQ WiMAXのサイトでは、速度制限のイメージをわかりやすく伝える新作動画を配信中だ。元プロボクサーのガッツ石松が解説者として登場し「ワイマックスvsエルティ」の試合を解説、試合展開は速度制限に達したり、対象エリアから外れると突如パンチのスピードが鈍るという筋書きで、ガッツ石松らしい小ネタが散りばめられたコミカルなコンテンツに仕上がっている。
この動画に出てくる要素として、もうひとつ注目なのはエリアの問題だ。11月29日の発表で、リサーチ会社のイードが全国14都市42スポットの「次世代高速通信サービスのカバーエリア調査」を実施。全国的に高速通信エリアが広く使えたのは、WiMAXがスポット数40か所と最多、最高速度を出したスポット数も19か所と1位で、次いでXiが高速通信エリア35スポットで2位という結果になった。
携帯電話やモバイル通信の多くの会社が発表している「カバー率」という数字は、正確には「人口カバー率」を指しており、日本全国を100%とした場合のカバー率ではない。人口カバー率は市町村の役所に電波が届いていればその市町村は「エリア」として見なされるため、場所によっては居住者が多くいても電波が届いていないということもある。
都市部に住んでいる場合は「人口カバー率」という点で、どのキャリアもつながりやすい傾向のため普段はあまり気にならないが、出張や旅行などの慣れない場所で通信環境が不安定だと、連絡手段としてだけでなく、地図機能の確認などでもネットへの依存度の高まっているだけに、困ることは多そうだ。そうした懸念を払拭するには、対応エリアの広さや多さを表す「面積(エリア)カバー率」が重要なポイントとなる。
「自分が動いた場所で、ネット接続ができるか気になるところ。カフェやコンビニなど公衆無線LANスポットが増え、都市部であれば緊急時もなんとかネット接続できますが、旅先や都市部以外で仕事をする時は、モバイルルータを持ったほうがいいでしょう。また公衆無線LANは場所によって品質にかなり差があります。『緊急時こそ、安定してネット接続をしたい』という人には、公衆無線LANよりもどこででも使え安心感のある、速度制限のないモバイルルータの使用がオススメです」(石川さん)