今年ほど企業経営者の再建意欲・手腕が問われた年もないだろう。
2008年より産業能率大学が行っている調査、「社長が選ぶ今年の社長2012」が発表された。その顔ぶれを見ると、1位の稲盛和夫氏(日本航空名誉会長)は、「JALの経営危機を短期間で克服し、再上場させた手腕はさすが」(59歳/サービス業)と評価も高く、過去4年連続トップだった孫正義氏(ソフトバンク社長)を上回る得票数を得た(以下はトップ5)。
■1位(5位)稲盛和夫氏/日本航空名誉会長
■2位(1位)孫正義氏/ソフトバンク社長
■3位(3位)柳井正氏/ファーストリテイリング会長兼社長
■4位(4位)豊田章男氏/トヨタ自動車社長
■5位(―)ティム・クック氏/米アップルCEO ※カッコ内は昨年順位
一方、注目すべきは、自ら「負け組」宣言をして、2期連続で7000億円以上という過去に例のない巨額赤字に見舞われそうなパナソニックの津賀一宏社長が7位、そして、業績不振が続き、ついに時価総額が1兆円割れしてしまったソニーの平井一夫社長が9位にランクインしたことだ。両社長には「再生への期待を込めて」(60歳/サービス業)、「復活を期待している」(29歳/製造業)など、デジタル機器の不振で国内総崩れの家電メーカーに対し、再起を願う声が多く寄せられた。
同調査では「社長が注目 来年の会社」もランキングしているが、堂々の1位に選ばれたのは、やはり経営再建中で主力銀行が融資を検討しているシャープ。「この会社の運命が日本経済の命運を握っていると思う」(38歳/製造業)との声が出るほど、家電業界の凋落ぶりは多くの企業経営者にとって負のインパクトが大きかったようだ。
今回、当サイトでは産能大調査では名前が挙がらなかったが、今年キラリと光る功績を残し、来年も引き続き注目の経営者を挙げてみたい。推薦してくれたのは、経済誌『月刊BOSS』主幹の関慎夫氏。
■大野直竹氏(大和ハウス社長)
今3月期の売り上げ予想が1兆9700億円と2兆円目前。「創業100周年を迎える2055年までに10兆円を目指す」と意気込むモーレツ会長・樋口武男氏との息もぴったり。
■田中孝司氏(KDDI社長)
iPhone5の発売以降、MNP(番号持ち運び制度)の転入超過が月間9万5000件を超えるなど絶好調。auアプリ390円使い放題、光回線とセットでの割引など積極展開が冴える。
■伊奈功一氏(ダイハツ工業)
クルマの低燃費に対するこだわりは、中小企業的なモノづくりとして大いに評価できる。12月20日に改良する「ムーブ」も、29.0km/Lと軽自動車イチの低燃費になる予定。
■中西宏明氏(日立製作所社長)
三菱重工との発電事業統合で主導権握る可能性あり。日立は総花的な経営スタイルを辞めて「ウチは社会インフラをつくる会社」と割り切った結果、利益が着実に出始めた。
関氏は、これら注目社長に共通しているのは「攻めの経営」だという。
「いまの日本企業は守りに入っても何もいいことはありません。苦しい時代だからこそ攻めて欲しい。ただ、全方位的に攻めるのではなく、自分たちの強みを見つけたらそこを徹底的に攻める。思い切った“選択と集中”ができる経営者が来年も注目されると思います」