今回の総選挙では自民党の石破茂・幹事長の選挙区(鳥取1区)で民主党が直前になって立候補の擁立を取り止めた。また日本維新の会は、石原慎太郎・代表の長男で自民党に所属する伸晃氏の東京8区(杉並区)に、対立候補の擁立を取り止めた。こうした不戦敗は選挙後を睨んだ自民党への秋波ともいえる。
民主と維新のラブコールを受けて、安倍自民はモテモテ状態である。安倍氏は「選挙の結果いかんにかかわらず自民党と公明党が連携していく」と、まず“正妻”である公明との夫婦円満を強調したうえで、「個人的には野田さん大好き」「維新との連携は選択肢の一つ」など、民主・維新の“愛人候補”を両天秤にかける言動を繰り返している。どこと組むかというイニシアチブは自分が握っていると自負している証拠だ。
だが、一度政権運営に失敗した“バツイチ総理”は、大きな仕事を成し遂げるには、まず家庭をおろそかにしてはいけないという大原則を忘れている。選挙中は大人しくしているものの、自民党内にはすでに安倍氏への不満が高まっている。反安倍派候補の選対幹部が語る。
「安倍さんは自民党内では、また“お友達内閣”かと冷ややかに見られている。というのも、全国遊説の行き先がみなお友達優先なんです。まず11月26日に都内を回ったが、元家庭教師の平沢勝栄氏をはじめ安倍派のところばかり。
その後も、側近の菅義偉氏や甘利明氏が神奈川の選挙区だからと横浜駅前で演説したり、関西でも後見人の伊吹文明氏や応援団長の高市早苗氏の選挙区を回ったり。このスケジュールは、総裁が選挙戦のためというよりはお友達重視の好き嫌いだけで遊説先を選んでいるとしか思えない。お友達でない議員たちは、当然、懐疑的にならざるを得ないでしょう」
自民党の候補者たちは、「当選すれば次は大臣か党幹部か」と政権復帰後のポストに胸を膨らませているだけに、かつての安倍内閣のように安倍氏が側近だけを重用すれば、不満が爆発する恐れがある。
※週刊ポスト2012年12月21・28日号