オークションサイトはじめ消費者同士が商品を売買できる場は増えたが、最近ではサイト上で個人どうしが直接やり取りし、「ゼロ円(無料)」であげたり貰ったりすることも簡単にできるようになった。
いわばネット版フリーマーケットとも呼べるこの仕組み。クラシファイドサイトと言い、アメリカでは古くから一般的な広告スタイルになっていたという。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が解説する。
「新聞やフリーペーパーを使って『売ります・あげます情報』や『求人情報』、『イベント情報』など短い広告や告知を無料で掲載できる掲示板のこと。それがネットの普及に伴って日本にも続々と誕生しています。不況続きで中古品でも欲しいという需要はありますし、不要なモノは例え無料でも誰かにあげたほうがエコだと考える人も多い。まさに時代に即したツールだと思います」
個人間取引のできるサイトは、アマゾンジャパンの「Amazonマーケットプレイス」やヤフーの「Yahoo!バザール」など大手も参入。物品だけでなく、家事代行や個人の知識、スキルの伝授ほか、サービスの売買まで対象になっているというから驚きだ。
ベンチャー企業のサイトも賑わいを見せている。2011年11月のサイトオープンからわずか1年で月間訪問者数60万人を突破した「JMTY(ジモティー)」(運営会社はジモティー)は、メールアドレスの登録だけで利用料も一切かからない便利サイト。「売ります・あげます情報」の投稿の約2割が0円で出品されている。
目を引くのは無料で取り引きされた品物の内容である。既に取り引きが終了したものもあるが、冷蔵庫、テレビ、カヌー、イカ船、クルマ、宅地、別荘……。いずれも新品で買えば高価なものばかり。
・「乗らなくなったので引き取りに来てくださる方に無料で差し上げます。ライフジャケットもおつけします」(カヌーの出品者)
・「宅配業務を辞めて必要なくなりましたので、被災者または関係者に無償でお譲りいたします」(クルマの出品者)
いかにも資産価値がありそうな“お宝”のやり取りを個人間、しかもネット上だけで行っていて危険はないのだろうか。
「とあるサイトでは、使い物にならないモノを無料に近い金額で購入して、後から修理代をふっかけられたり、重量税や保険を一切払っていないクルマをもらって保険会社から問い合わせが来たりといったトラブルもあるそうです、現実社会にそんなにオイシイ話がないのと一緒で、ネットでもそんなに都合のいい話は転がっていません。高級車や土地などいかにも価値の高そうなモノほど気をつけて慎重に取り引きしたほうがいいでしょう」(前出・井上氏)
ちなみに、前出のジモティーでは、送料や成約後の諸経費の負担などは個人間のやり取りに委ねているが、「悪質なトラブルに見舞われた場合は、サイト内で報告して注意喚起を促しています」(担当者)と話す。
税理士の落合孝裕氏は、見落としがちな税務上の問題を指摘する。
「市場で買ったら実勢価格で110万円以上するような高額のものは、もらった側が贈与税を納めなければなりません(それ以下は非課税)。また、不動産を無料でもらっても、不動産取得税など固定資産税の評価額のおよそ5%が手数料としてかかります」
何でも無料だからといって、“わらしべ長者”になろう、なんて欲は出さないほうが無難だろう。