日本漢字能力検定協会が発表した今年の漢字は「金」。キンカネキムと読み方だけでもツッコミどころが多い今年の漢字を、大人の粋としていかに遊ぶか。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が語る。
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すっかり年末の風物詩になっていますが、日本漢字能力検定協会が12月12日に「今年の漢字」を発表しました。全国から寄せられた25万票の投票の結果、2012年の世相を表わす漢字に選ばれたのは「金」。2000年に続いて2度目の受賞(?)で、初めて再選されるという金字塔を打ち立てました。ちなみに、2位は「輪」、3位は「島」だったとか。
「金」が選ばれたのは、金環日蝕やロンドン五輪での金メダルラッシュで日本が湧いたことなどが理由とされています。もしかしたら、生活保護費の不正受給問題や、国から個人までみんなが財政難だったことも、少なからず影響しているかもしれません。しかも、発表された12日には、北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」と称した長距離弾道ミサイル発射を強行。図らずも、かの国を支配する金さんを連想させることにもなりました。
職場で「今年の漢字」が話題になったときに、公式見解どおりに「今年は、金環日蝕や金メダルで日本が湧いたからねえ」なんて言ってしまうような、そんなつまんない大人にはなりたくないもの。せめて、ちょっとシニカルに「みんながいちばん切実に欲しいものが選ばれたってことだね」とか、大きくひねって「政治不信がこうじて遠山の金さん的な存在を求めているってことかもね」なんて言ってみましょう。遠山の金さんのほうはほぼ間違いなく大スベリしますが、己の勇敢さをホメてあげることはできます。
また、この行事にちなんで、いろんな人が自分にとっての「今年の漢字」を発表しています。野田佳彦首相は「決断」の「決」、横綱日馬富士は「夢」、ガチャピンは「人」だとか。私たちも、自分だけの「今年の漢字」を考えてみるのはどうでしょうか。どうせなら大人の粋や伝えたいメッセージや、場合によっては下心を感じさせる字にしたいところ。これからの時期、忘年会の席でそういう話に持っていって、さもその場で考えたフリをしつつ披露しましょう。
口説きたい女性に言うなら、相手の名前の一文字で決まり。部下といっしょだったら「団結」の「結」ぐらいでしょうか。ただ、口説いている場面で同じ字を出すのは、ちょっと勇み足です。今年課長になった人が「課」なんて言うと、本人は責任感や課への愛着を示したつもりでも、出世したのがよっぽど嬉しかったんだなと苦笑いされるでしょう。
あえてウケを狙うなら、かつての首相を見習って(選挙の時期だけに名前は自粛)、「そうだなあ、俺の今年の漢字一文字は……」と言いつつ「やっぱり『挑戦』かな」と二文字の言葉を出してきたり、「うーん『トライ』かな」とカタカナを言ってみたりするのも一興。私としては、伊勢うどんへの愛が高じた一年だったので、やはり「饂飩」ですね。
ま、ウケるかウケないかは時の運ですが、披露したあとで、小さく「……と、そんな感じかな。漢字だけに」と呟いておけば、ほんわかした雰囲気にはなります。