芸能

米倉涼子主演『ドクターX』にみるドラマヒット法則を識者解説

 米倉涼子(37才)主演でヒットした連続ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)。米倉が、組織に属さないフリーの天才外科医・大門未知子を好演し、「私、失敗しないので」などセリフも話題を集めた。13日放送の最終回は平均視聴率24.4%を記録。全8話の平均視聴率でも19.1%と今年の民放でNo.1ドラマとなったが、ヒットしたのには、ワケがあった。コラムニストのペリー荻野さんが、ヒットの法則を解説する。

 * * *
 このドラマには、今後のドラマ業界にとってヒントになるようないくつものヒットの法則があったと思います。

 米倉が悪女役で主演したテレビ朝日のドラマといえば『黒革の手帖』『けものみち』『わるいやつら』がありますが、今作も設定は違うけれども、米倉らしい男まさりで図太い女を演じたという点では同じ。奇をてらいすぎず“こんな米倉を見たい”という、固定客の期待を裏切らなかったことが、まずあげられると思います。

 名ゼリフがありますよね。「私、失敗しないので」「致しません」という。他の女優が言うと“何言ってるんだ”ってなってしまうけれど、米倉はこれまでの悪女役の実績があるからこんなセリフもピタリとはまる。“よくぞ言ってくれた”みたいな爽快感もあります。

 フリーランスは、組織に対して媚びなくてもいい立場ですが、そうは言っても大概の人は無茶なことはできないじゃないですか。でも、どこかで“一発言ってやりたい”みたいなことをみんな思っている。そんな願望も叶えてくれているんですよね。

 世の中が窮屈になってくると、フリーで生きている人が注目を集める傾向にある。それは、ドラマでも同じことが言えると思います。

 高度経済成長のころは、誰もが組織のためにと一生懸命働いていましたが、それもそろそろしんどいという声が出てきたときに、『木枯らし紋次郎』(フジテレビ系・1972年)という時代劇が出てきた。腕一本で生きる一匹狼の紋次郎(中村敦夫)が悪い奴らをやっつけていくストーリーに多くの人が興奮し、大ヒットしました。

 少し前では、篠原涼子主演『ハケンの品格』(日本テレビ系・2005年)が、組織に束縛されないスーパー派遣社員を主人公にして、高視聴率を記録しましたが、このときも今も、大企業に勤めていても安泰ではなくなり、企業でもリストラがあり学生の就活も厳しい状況が続き、誰もが閉塞感を抱いている。そんななかで、米倉演じる大門未知子のように自分のスキルだけで生きている姿は、格好よくもうらやましくも見える。そうした時代背景をうまくとらえて、作品に落とし込んだこともヒットの理由のひとつでしょう。

 そしてもうひとつ、今回のドラマには“家政婦のミタ方式”が使われていました。毎回決まって言うセリフを盛り込んだ点もそうですが、最後まで大門未知子の正体を明らかにせず視聴者の関心をひっぱったところは、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)で三田の正体が終盤にかけて徐々に明らかになっていく手法とまったく同じです。

 最近はツイッターやフェイスブックなどで誰もが意見を言えるようになりましたから、こういったドラマの設定は、以前にも増して盛り上がりやすい。実際、今回のドラマでもツイッター上でさまざまな声が飛び交っていました。これからのドラマは、これまで以上にツイッターやSNSを意識することも重要だと思います。

 極端な話ですが、制作側がツイッターでどんな意見が出ているのかをチェックし、ストーリーや結末を変えることだってできる。もちろん、最後まで正体がわからないという手法は小説や漫画の原作がないオリジナル作品だからこそできたわけで、そういう意味でも練りに練られた脚本の勝利であることは言うまでもありません。

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト