師走の選挙の行く末を注視しているのは国民ばかりではない。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。
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2012年12月13日、中国国家海洋局に属する固定翼機が日本の領空を侵犯するという事件が起きた。
航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発信する事態にもなったが、上空で両機が接近することはなかった。
これまでも尖閣諸島周辺の海域に中国の漁業監視船や海洋監視船が現れ、領海侵犯することはあったが、空であからさまな侵犯を行うことはなかった。空は海と違い海上保安庁のような組織がないため、すぐに自衛隊が対応することとなる。その分、攻撃の可能性は高まり、それだけに海上とは違う緊張感が日本政府の間に広がった。
いったいなぜ中国はこんな危険な行動に出たのだろうか?
実は、ここには中国の対日政策の重要な変化のサインが表れているのだ。中国の外交関係者が語る。
「実は12月12日に北京で外交務虚会が開かれていました。これは外交部が中心になって行う会議ですが、軍も含めた関係省庁から局長級が参加して行われるもので、当面の外交政策の方向が決められます。今回の会議で最大のテーマとなったのは、当然のこと日本の問題でした。テーマはもちろん釣魚台(尖閣諸島)問題です。
この会議では、日本が新政権発足後に尖閣諸島問題で新たな一歩を踏み出してくる可能性が高まったと分析されたのです。そこで、中国がそれを絶対に許さないという明確なメッセージを伝えておかなければならないという結論に達したのです。今回の領空侵犯はその入り口ということ。中国の圧力はこれからどんどん強まることとなるでしょう」
そもそも中国は不思議なほど新政権に期待をしていた。それは自民党が主導権が握れば、それなりに民意が落ち着くと予測されたことや、安倍晋三前総理が前回〝雪解け〟を行ったことがイメージとして残っていたからとされる。中国では西側の選挙で繰り返されるスローガンや政策は「選挙用のポーズ」と受け止める傾向がある。そのため前半は対中強硬の言論が目立っても、それを問題視することはなかった。しかし、選挙を分析してきた外交部は、終盤に差し掛かり「これはいよいよ本気だ」(同然)と受け止めたという。
今後、新政権が正式に発足すれば、さらに中国が圧力を強めてくることは間違いないだろう。