ついに中国が尖閣諸島上空にまで「領空侵犯」してきた。日本の海だけでなく日本の空にまで中国が食指を伸ばしてきた格好だが、その一方、度重なる「領海侵犯」に対して、徐々に日本のメディアが麻痺しているとジャーナリストの櫻井よしこ氏は警鐘を鳴らす。実際、領空侵犯の直前には3日連続で領海侵犯していたにもかかわらず、ほとんど報じられていなかった。新刊『中国に立ち向かう覚悟』(小学館)を上梓したばかりの櫻井氏が解説する。
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いまアジア・太平洋地域はかつてない軍拡の真っ只中にあります。中国は1989年以来の約四半世紀で、軍事費を実に30倍に増やしました。人類史上類例のない中国共産党人民解放軍の異常な軍拡にアジア諸国が必死に対応しようとしているのが、現在進行中のアジア・太平洋全域に広がった軍拡です。
日本に対する中国の脅威は尖閣諸島においてあまりにも顕著です。尖閣の国有化以降、台風接近の時を除いて連日、中国の公船が尖閣周辺海域に張りつき、領海侵犯を繰り返しています。日本のメディアもこの自体に慣らされつつあるのか、記事は小さくなり、掲載の紙面は、一面から社会面の片隅に移っています。報じなくなった全国紙もあります。
この奇妙な慣れとそれに伴う精神の弛緩こそ危険の兆候です。この局面で尖閣を守り切れるか否かは、日本が主権国家であり続けることができるか否かの究極の問いにつながります。主権侵害に黙っているとしたら、日本はもはや独立国ではあり得ません。
中国共産党の野望に立ち向かう闘いが熱い軍拡の形をとってアジア・太平洋で続いている中で、ひとり日本だけが異質の対応を続けています。その特徴は心身共に弱い日本であり続けていること、といっていいでしょう。
※櫻井よしこ著『中国に立ち向かう覚悟』より