7分間の新幹線劇場――東北・上越新幹線を利用したことのある人なら、礼に始まり礼に終わる、新幹線をあっという間にきれいにしてしまう清掃のエキスパートたちを見たことがあるだろう。
長年、日本のものづくりの現場をフィールドワークとして研究してきた遠藤功さん(56才)の著書『新幹線お掃除の天使たち「世界一の現場力」はどう生まれたか?』(あさ出版)が売れている。
東北・上越新幹線などの清掃を担当している『テッセイ(現JR東日本テクノハートTESSEI)』で働く人々の姿を通して、仕事のありかたや人と人とのつながりを問うこの本で描かれる、日本人の原点ともいえそうな“おもてなしの心”や“チーム力”は、日本が元気になるヒントに満ちている。遠藤さんは執筆のきっかけを、同社の“エンジェル・リポート”を読んだことと振り返る。エンジェル・リポートとは、現場で頑張っている人たちを上司や仲間が褒める報告書のことだ。
「このリポートを初めて読ませていただいたとき、いい話がたくさんあって目頭が熱くなりました。彼らの働く姿を、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと思ったんです」(遠藤さん・以下同)
20代の青年を母親のように指導する管理職女性、ホームで戸惑う目の不自由な男性を偶然2度も導くことになった女性スタッフ…。清掃の現場で起きている“ちょっといい話”が11本、本書に収録されている。
同社の従業員数は正社員、パートナーと呼ばれるパート社員を合わせ約820名。清掃スタッフの平均年齢は52才。女性比率は約5割だが、管理職や現場リーダーである主任には女性が数多く登用されている。
「テッセイがすごいのは、きちんと縦の昇格システムをつくっているところです。パートの中年女性であっても、清掃スタッフから始まって、仕事が認められたら正社員、主任、管理職と昇進できる。女性だから、おばちゃんだから管理職は無理、ではない。このシステムが会社に活力を与えていると思うんです」
※女性セブン2012年12月27日・2013年1月1日号