ライフ

ノロウイルスやインフルエンザに“体の中から”も感染症予防

 ノロウイルスによると考えられる感染性胃腸炎は、今年11月中旬以降、地域差はあるものの、全国的に大流行している。今冬の流行は、ノロウイルスの変異株によるものと示唆されていることが特徴だ。

 山形県では医療機関1か所当たりの平均患者数が23.60人に上り、国立感染症研究所が定める基準値(20人)を超えたことから、12月11日、感染性胃腸炎警報を発令。京都府では3小学校が学級閉鎖(12月10日現在)。愛媛県では、松前町の特別養護老人ホームで30人が食中毒を発症し、有症者からノロウイルスが検出された(12月11日)。国立感染症研究所によると、ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、12月から3月にかけて、全国的に流行するという。つまり、危険なシーズンはまだ始まったばかりだ。

 そんな中、昨年5月に発表された「乳酸菌には、ノロウイルスによる発熱を軽減する効果がある」という研究成果があらためて注目を集めている。乳酸菌には感染症の予防効果があるとされているが、ノロウイルスによる胃腸炎に対して、乳酸菌の効果が確認できたのは世界初という。

 ノロウイルスによる急性胃腸炎は、乳幼児から成人、高齢者まで幅広く発症するのが特徴で、主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱。とくに乳幼児と高齢者では嘔吐と下痢が激しく、体内から水分が失われやすい。そこに発熱を伴うと、水分がさらに蒸発して、脱水症状による危険が高まる。

 順天堂大学大学院医学研究科プロバイオティクス研究講座を中心とする研究グループは、「高齢者が乳酸菌飲料を日常的に飲んでいると、ノロウイルスによる感染性胃腸炎の発熱症状が軽減される」という研究結果を発表した。

 研究では、高齢者医療施設の入所者71人(平均85才)を2グループに分け、一方がヤクルトで知られる乳酸菌「L.カゼイ・シロタ株」入りの飲料を継続的に摂取した。研究を始めて2か月後、施設内でノロウイルスによる胃腸炎が発生したが、37度以上に発熱した期間は、非摂取グループでは平均2.9日だったのに対して、摂取グループでは平均1.5日と、約半分。また、38度以上に発熱した人も少なかった。体力の弱い高齢者にとって、発熱期間とその程度が減ったことは、非常に有意義といえる。

 研究グループの責任者の山城雄一郎特任教授は、この結果をこう分析する。
「摂取グループの人の便を調べたところ、善玉菌が増えて悪玉菌が減っていました。L.カゼイ・シロタ株の作用によって、腸内環境を改善できたことが、発熱症状の軽減の要因と考えられます。変異型のノロウイルスに対しても同様の効果があるといえるでしょう」

 また、同研究グループでは、L.カゼイ・シロタ株入りの乳酸菌飲料摂取者が、新型インフルエンザの感染を予防し、さらに感染後の症状が緩和されることも確認している。
「L.カゼイ・シロタ株入りの乳酸菌飲料を継続して飲むことで、ヒトの腸内にいる細菌のバランスが整い、腸と体全体の免疫力が強化されます。抵抗力の弱い高齢者が集団で生活する施設などで、ノロウイルス感染症やインフルエンザの予防や、症状軽減に、L.カゼイ・シロタ株の摂取が有効な対策になる可能性が示唆されます」(山城特任教授)

 ノロウイルスに対しては特効薬がないといわれ、厚生労働省や国立感染症研究所は、食中毒や感染症の発生を防止するために、手指や調理器具の徹底的な除菌を呼びかけている。また、インフルエンザ予防としても、うがいや手洗い、マスクが有効だが、こうした日常的な予防対策に加えて、乳酸菌飲料やヨーグルトも取り入れた“体の中から”の感染症対策も心がけたい。

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト