「政治家が殊勝になり、有権者の声が大きく通る」――選挙期間とはそういう時期である。自民党が圧勝し、民主党が大惨敗を喫した今回の総選挙で、本誌記者が全国各地で集めた、国民の「秀逸ヤジ」を紹介しよう。
ある意味、この選挙戦で“最大の話題”をさらったのは菅直人・元首相だった。民主党の幹部クラスが候補者の応援に東奔西走する中、選挙区(東京18区)にベタ張りしてドブ板を踏むも、小選挙区で落選。しかも選挙カーの事故で頭部を12針縫う怪我をするなど、まさに泣きっ面に蜂。
どの演説会場でも聴衆が少ない。事故前日の12月12日、大票田・府中市の府中駅前で演説を始めるも足を止めるのは10人に満たず、SPばかりが目立つ。商店街の練り歩きでは子供たちに頼まれた写真撮影に快く応じるも、彼らに選挙権はない。隣を足早に通り過ぎた60代の女性は、菅氏の「原発をゼロにします」という言葉に、「アンタは何もやってないじゃない!」と吐き捨てた。
事故の翌日には、「ご心配かけました。中身の方は何とか大丈夫です」と額のガーゼを指さして笑いを取ったが、「中身は前からダメだよ。空きカン、すっからカンだ」の辛辣なヤジ。その後も「脱原発」を連呼するも、「経済はどうすんだ!」の声には知らぬ顔だった。
それでも、何とか比例で救われ、銅バッジ(*注)で国会に戻ってこられたのだから悪運が強い。
【*注】代議士の“ランク”を意味する政界の隠語。小選挙区で当選した者が「金バッジ」、比例単独で当選した者が「銀バッジ」、小選挙区で落選して比例重複で復活した者が「銅バッジ」。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号