保険は加入者の人生と家族を守るための「武器」であると同時に、保険会社にとっては「メシの種」である。
日本人は、世界に類を見ないほどの保険好きだ。1世帯平均の生命保険料は年間45万4300円。世界人口の2%に満たない日本人が支払っている保険料の総額は世界シェアの約18%を占め、1人当たり約3500ドルは世界トップである。
それは「保険会社の誘導に消費者がつられているから」だと、『生命保険の「罠」』(講談社)などの著書がある後田亨・保険相談室代表は指摘する。
「自分が契約している保険の内容を覚えていない加入者が驚くほど多い。“テレビCMでよく見かける商品だから、人気があってお得な商品のはずだ”といった理由で保険に加入し、保険料も給料天引きの税金のような感覚で払い続けている。生保には都合がよくても、加入者にとってはそれでいいはずはない。
保険は、加入者から集めたお金を共有財産として、不幸があった人や家庭に再分配する相互扶助の仕組みです。問題なのは、価格設定の情報が明らかにされていないことです。もしお金を再分配する際、保険会社の経費として半分ぐらいが消えているとしたら、それは相互扶助とはとてもいえません」
生命保険の保険料の内訳を見ると、いかに保険会社が得する商品を販売しているか、そのカラクリがよくわかる。
まず、保険金の支払いのために必要な部分は「純保険料」と呼ばれる。そこに、利益を含む会社の経費の部分である「付加保険料」がプラスされて、加入者が毎月支払う保険料が計算されている。
もともとあらゆる保険商品は、保険会社が損をしないように、加入者から十分にお金をとっておくことになっている。言い換えれば、加入者が支払う保険料と受け取る保険金のバランスを考えると、トータルでは必ず加入者が損をする仕組みなのだ。
胴元の保険会社の運営を考えると、余分にお金を集めることは当然かもしれない。だが、その額が大きすぎるなら、消費者にとっては保険に加入するメリットはない。
※週刊ポスト2013年1月11日号