『日本/権力構造の謎』や『人間を幸福にしない日本というシステム』の著者であるK.V.ウォルフレン氏は、改革を訴えて登場した民主党政権が結局のところ官僚らにイニシアティブをとられ、意のままに操られたと指摘。自民党政権はこうした官僚独裁主義を完全復活させるだろうという。以下はウォルフレン氏の解説だ。
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今回の総選挙では、本気で改革の舵取りをしようとする政治家を押しのけて、自動操縦装置任せで目先の利益に左右される政治家が選ばれた。そして、「日本というシステム」の一翼を担ってきた自民党政権が復活したのだから、この選挙結果は確かに悲劇というほかない。
安倍晋三氏は、彼自身がいかに改革を志向していたとしても、官僚にとって野田氏より扱いやすい人物となるだろう。私は『週刊ポスト』前号の「日本史上最高のリーダーは誰か」という問いに、田中角栄、中曽根康弘、そして小沢一郎の3氏を挙げた。それは、彼らが確固たる信念を元に、官僚と対峙する覚悟と能力を備えていたからだ。
だが、安倍氏にはそうした信念がない。「中国とは友好な関係を築きたい」と現実的な発言をする一方で、靖国神社参拝のようなシンボリックな行動を標榜する点に、信念の欠如による矛盾や混乱を感じる。そうしたあいまいな姿勢では、旧来の自民党と官僚の関係は到底変えられまい。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号