2度目の総理登板を果たす安倍晋三氏。この新総理大臣は、5年前の退陣後から「政策的には間違ったことはしていない」(文藝春秋2008年2月号掲載の手記)と自己正当化し、退陣が国民生活にどんな影響を与えたかに頬被りしてきた。
再登板で真っ先に問われるのは安保や憲法ではなく、安倍氏がかつて放り出した数々の政策をどうするかである。
1番のテーマは年金問題だ。前回の安倍政権当時、消えた年金問題が発覚し、年金制度を根底から揺るがした。安倍氏は国民の批判を浴びると、
「最後の1人まで年金記録を照合し、皆さんの年金をきっちり支払う」
そう約束したうえで、「強い経済成長によって税収を増やすことは可能だ。消費税を上げなくて済む可能性はある」と増税なしで年金財源(国庫負担)をまかなう姿勢を示していた。
しかし、何もしないまま投げ出すと、その後の福田、麻生両政権も、民主党政権も年金の抜本改革に手をつけないまま、自公民3党は年金の国庫負担引き上げなど社会保障財源を名目に消費税大増税を決めた。国民は増税によって5年前の安倍政権当時の年金問題の尻ぬぐいをさせられている。
今回の自民党の総選挙公約には、消えた年金記録も、年金制度の抜本改革もない。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号