投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、2012年12月24日~2013年1月4日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週・来週のドル・円は、2012年内は、米国の財政協議を見極め、2013年は1月4日の米国12月の雇用統計を見極める展開となる。ドル・円は、日本要因では、安倍政権のリフレ政策への期待感、日本の貿易赤字の長期化懸念などから、底堅い展開が予想される。米国要因では、財政の崖が回避できなかった場合は、ドル売り、12月の雇用統計が悪化した場合もドル売りとなる。
【米国の「財政の崖」協議】
オバマ米政権と共和党指導者の間で、年末までの決着を目指して「財政の崖」に関する協議が行われており、財政の崖が回避できた場合はドル買い、難航した場合、回避できなかった場合は、ドル売りとなる。
【米国12月雇用統計】(1月4日)
米国の12月の雇用統計では、失業率が7%台なのか、非農業部門雇用者数が失業率の低下となる15-20万人程度なのかを見極める展開となる。
【安倍政権のリフレ政策】
日本銀行金融政策決定会合では、安倍政権が標榜しているリフレ政策により、「物価上昇率目標+2.0%」が導入される可能性が高まっている。補正予算により10兆円規模の財政出動が予想されていることで、円安トレンドが予想される。
【仕組債の円買いヘッジポジション】
ドル・円相場は、2011年は75円台から85円台、2012年は76円台から84円台で推移して来た。もし85円を上抜けた場合、85円から95円でのレンジに移行する可能性が高まることで、円買いヘッジポジションを構築している仕組債による大規模な巻き戻し、ドル買い・円売りが予想される。
【5年物リスクリバーサル】
オプション市場で、5年物のリスクリバーサルが初めて円プットオーバーに転換しており、中長期的なドル高・円安トレンドへの転換が予想されている。リスクリバーサルは、日米の貿易不均衡、すなわち、米国の貿易赤字、日本の貿易黒字を受けたドル安・円高トレンドを反映したものだった。米国の貿易赤字は、シェールガス革命により赤字の減少が見込まれており、日本は日中関係悪化などから貿易赤字の長期化が見込まれている。
【テクニカル分析】
ドル・円は、75円32銭を頭とする「逆ヘッド&ショルダーズ」が完成しており、目
標値92円50銭処が点灯している。
2012年12月24日-2013年1月4日に発表される主要経済指標のポイントは次の通り。
○(米)12月消費者信頼感指数 -- 12月27日(火)日本時間28日午前0時発表
・予想は、70.0
米国株式市場は12月以降、やや不安定な動きを続けている。雇用情勢が悪化しているとは言えないが、雇用拡大のペースは緩やか。ただし、住宅市場はまずまず順調であることから、信頼感指数の大幅な低下はないとみられる。
○(日)11月全国消費者物価指数 -- 12月28日(金)午前8時30分発表
・予想は、全体の数字が前年比-0.2%、コアは同比-0.1%
前月から横ばいの見通し。先行指標となる東京コアCPIは、11月-0.5%。マイナス幅はやや拡大している。ガソリンや電気料金などエネルギー価格に大きな変動ないことから、下落率はコンセンサスを若干上回る可能性がある。
○(米)12月ISM製造業景況指数 -- 1月2日(水)日本時間1月3日午前0時発表
・11月実績は、49.5
先行性のある同指標内訳の11月「新規受注DI」は50.3←10月54.2と大きく低下。既公表の12月の各地区連銀指数は、NYが悪化。他の地区連銀については若干の改善が見込まれるが、11月と大差ない状況のようだ。新規受注DIの低下を考慮すると、12月も50を下回る可能性がある。
○(米)12月ADP雇用統計 -- 1月3日(木)日本時間日午後10時15分発表
・11月実績は、前月比+11.8万人
調査期間である12/12を含む週の新規失業保険申請件数は、やや増加。4週移動平均の数字は11月9、16日週の件数がハリケーンの影響で急増しており、参考にはできない。失業保険継続受給者数はおおむね横ばいとなっており、雇用者数の増加は11月の実績とおおむね同水準となる可能性がある。
○(米)12月雇用統計 -- 4日(金)日本時間午後10時30分発表
・11月実績は、失業率が7.7%、非農業部門雇用者数は+14.6万人
12/12を含む週の新規失業保険申請件数は、やや増加。4週移動平均の数字はハリケーンの影響で急増しており、参考にはできない。失業保険継続受給者数はおおむね横ばいとなっていることから、11月との比較で雇用者数の大幅な増加は期待できない。失業率は横ばいか、やや上昇する可能性がある。
主な予定は、27日(木):(米)11月新築住宅販売件数、28日(金):(米)11月中古住宅販売仮契約、1月4日(金):(米)12月ISM非製造業景況指数
【予想レンジ】
・ドル・円81円00銭-86円00銭