2013年は「動乱の始まりの年」と言っていい。それは東アジアの海洋を舞台に日本、中国、韓国、ロシア、そして北朝鮮が自らの国益を懸けて対峙する「グレートゲーム」の始まりである。その中で日本が何を守るべきなのか、外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が解説する。
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2012年11月、中国共産党は習近平氏を新しい総書記に選出し、「海洋強国」を目指すと宣言した。中国は強国の証として空母機動部隊を創設し、日本の尖閣諸島を窺う構えだ。北の海に目を転じるとロシアが北方領土に、西の海では韓国が竹島に攻勢を強めており、北朝鮮はミサイル発射で揺さぶりをかけている。
日本の国境線はいま、周辺国の攻勢にさらされて縮み始めていると言っていい。日本が国際社会に存在感を示すには、際立ったリーダーシップの確立こそ急務だろう。これまで東アジア安定の礎(いしずえ)だった日米同盟が脆くなっており、手を拱(こまね)いていれば解体の危険すらあるだろう。
中国が「核心的利益」と位置付ける尖閣問題こそ、外交にかける日本の意志が問われている。2010年9月、ヒラリー・クリントン米国務長官は日本が実効支配している尖閣諸島に日米安保条約の第5条を適用すると言明した。
これに対して中国は、外交の限りを尽くして「クリントン発言」を切り崩そうとしている。こうしたなかで日本政府は、クリントンなき2期目のオバマ政権にも「ヒラリーの約束」を引き継がせることこそ死活的に重要となる。
※SAPIO2013年1月号