日本プロ野球黎明期にグラウンドを彩った選手たちが、もし現代のプロ野球に甦ったら――? そんな夢のようなテーマを元に、往年の名選手に話を聞いた。「今の時代に金田正一がマウンドに登ったとしたら、打者は打てるだろうか?」――こんな問いに対し、400勝投手・カネやん(79)はこう語る。
「(カッと目を見開いて)打てるわけないだろう! 150キロ? そんなもん軽く投げたら出とったわ。ワシの球はそっと投げても、手元に来るとズンと伸びたんじゃ。水面に向かって石を投げたら、トントンと跳ねるが、あれと同じで空気抵抗を使って投げていた。特に、捕手の方向から風が吹くアゲインストの日には、変化球の曲がりが大きくなってまったく打たれなかった。今のドーム球場に慣れた子たちには、想像もできんだろうな」
そんなカネやんは、当時すでにメジャーにも認められていたという。
「1958年、ワールドシリーズの観戦に連れていってもらったんだ。ヤンキースのステンゲル監督が、“カネダはアメリカでも成功する”といっていたよ。なんでやらなかったか? 英語ができんかったからだ。
そもそも、アメリカで自動ドアを初めて見て、驚いて腰を抜かしたような時代じゃぞ。しかし、もしメジャーでプレーしていれば最低200勝はできていたな。当時すでに200勝を超えていたから、メジャーでも400勝じゃ。とにかくワシは19年2か月で400勝。だから何をいってもいいんだ」