これまで、変死・行方不明者を合わせて少なくとも10人に及ぶ事件に関与した稀代の凶悪犯罪者、角田美代子被告(享年64)が12月12日、逮捕されていた兵庫県警本部の留置場で、自殺しているのが見つかった。彼女の選んだ死に方は、自絞死という聞き慣れない方法だった。
獄中での角田被告の素顔を知る人物がいる。2011年9月4日から24日までの20日間、3人が一緒に勾留される留置場の一房で、角田被告とともに過ごした女性・福井陽子さん(仮名・30代)だ。ある微罪で兵庫県警に逮捕された福井さんは、留置場の中で角田被告と意気投合。角田被告を「オカン」と呼んで、まさに寝食をともにしながら、つぶさに様子を見てきた。福井さんが振り返る。
「オカンは私に、『東美樹子(あずまみきこ)』と名乗っていたし、当時はあんな事件を起こしたことなんてまったく知りませんでした。バーバリーの黒いトレーナーにジャージと、けっこういいものを着ていましたね。体が大きくてガッチリしてて、声も低くてドスのきいた感じ。担当刑事や看守に対しては何もしゃべらないし、ふてぶてしい感じでしたが、私にはとても優しかった」
東というのは、内縁の夫で韓国籍の鄭頼太郎(ていよりたろう)被告(62才)の通名である。福井さんが「何したん?」と聞くと、角田被告は「傷害や」と言って笑ったという。
角田被告は2011年11月、コンクリート詰めにされて遺体が発見された大江和子さんの長女、香愛被告(44才)を殴り監禁した容疑で逮捕された。それ以降、遺体遺棄容疑などで再逮捕を重ねながらも一貫して黙秘を続け、捜査は全く進まないまま1年が経とうとしていた。恐らく角田被告は、このまま逃げおおせると思っていたのだろう。角田被告は、留置場を出た後の再会を約束し、福井さんのノートに自らの携帯電話の番号を書き記してもいる。
「私が『この先、どうなるんやろ』って不安を漏らすと、オカンは『あんたはこういうことに気をつけたほうがいい。取り調べでもなんでも、いらんことしゃべったらあかんで』と話してくれました」(福井さん)
余裕たっぷりの留置場生活を送っていた角田被告だったが、徐々に様子が変わっていったという。福田さんが続ける。
「私が出る4~5日前ですから9月半ばだったと思います。オカンは取り調べから戻ってくると、『おかしい、おかしい…』とつぶやいて、『なんやの、これは! どないなってるん』と独り言のように言っていました」
角田被告はその後、感情の起伏が激しくなっていき落ち込むことが増えた。
「突然泣き出すようになったり…警察のことを『おかしな動きして!』とか『奥歯に物が挟まったような言い方して!』と憤っていました。私が留置場を出る最後の日(9月24日)には、オカンは昼ご飯を全部残したんです。それまで一度もなかったことなので、『救急車を呼んでもらおうか?』と言ったんですが、オカンは『大丈夫や』と言っていました」
福井さんが留置場を出た後、角田被告はさらに変調をきたしていく。10月22日に「家族のことを思うと、生きていたくない」などと署員に漏らしたかと思うと、「毎日がつらい」「どうやったら死ねるか」などと、たびたび吐露するようになったのだ。
このため兵庫県警は、角田被告の自殺を防ぐべく、彼女を「特別要注意者」に指定して、通常は1時間に4回巡回するところを6回にするなど監視を強化したが、12月12日、角田被告は自絞死を遂げたのである。
※女性セブン2013年1月10・17日号