二足歩行をする人間が頭部のバランスを保つために、重要だといわれているのが顎。肩こりなども、この顎の位置によって生じるという。フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が、顎の「かみ合わせ」の重要性を解説する。
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私たち人類は、200万年ほど前から二足歩行で生活していますが、頭部がとても重いため、脊椎(特に頭部に近い部分)に大きな負担がかかります。ちなみに頭の重さは平均して5~6kgあり、体重の10%強もあります。この重い頭を支えるにはバランスが重要で、そのために私たちはさまざまな筋肉を無意識に使っています。
このバランスに重要なのが、顎なのです。顎は頭部の一部ですが、顎関節を介して重りのようにぶら下がっており、体の傾きに応じて頭部を一定の位置に保つバランサーのような役割をしているのです。このため逆に顎の位置が悪いと、全身のバランスが崩れてしまうことになります。すると無駄な筋肉を使うようになり、その結果、首筋や肩がこってしまうのです。
そして、首筋の上部(頭の付け根)のこりは、頭部に行く血管を圧迫し、脳や顔に充分な血液が行かなくなる要因のひとつで、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
顎がずれていると、体のバランスが悪くなると同時に、かみ合わせが悪くなります。つまり、肩や首のこりで悩んでいる人が多いということは、かみ合わせが悪い人が多いということになります。ところが専門家によれば、正しいかみ合わせの人はきわめて稀だそうです。
かみ合わせをよくすることを「咬合是正」といいますが、これによって顎の位置を正すことで、体のバランスがよくなり、肩や首、腰のこりも解消されます。
このときの脳の活動を調べると、筋肉を収縮させる脳領域や手足のバランスに関係する脳領域の一部の反応がすっと減少します。つまり、かみ合わせが悪い=顎がずれていて体のバランスが悪い状態で使っていた「余分な脳活動」が減少し、その結果、こりも解消されるわけです。
このとき同時に、脳、特に前頭前野への血流量が増えます。前頭前野はさまざまな知的能力の“センター”(司令塔)です。そのため咬合是正によって血流が増えると、前頭前野の働きがよくなります。ひとことでいえば、「頭がよくなる」のです。
※女性セブン2013年1月10・17日号