安倍晋三氏の“アベノミクス”への期待感から日経平均は上昇したが、大前研一氏は、ハイパーインフレになる前に、貯蓄を消費に向かわせて経済を上向かせることを考えるべきと説く。
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相続税・贈与税をゼロにする政策も有効だろう。老人よりお金を使ってやりたいことが多い若い世代が相続・贈与を受ければ、需要が生まれるからだ。
日本には生前贈与という制度があるが、あまり利用されていない。その理由は、生前贈与を受けた分の相続税がなくなるわけではなく、贈与者が死んだ時に精算して受贈者が払わなければならないからだ。
生前贈与を受けても、後々のことを考えるとなかなか使えないのである。そこで、生前贈与を受けた財産を後顧の憂いなく使えるようにする。たとえば、2億円相続した人が5年以内に半分の1億円で住宅や車や洋服など何かを買ったという証拠があれば、その分に相続税はかけない、とするのだ。
要は、経済政策のすべてを(今は眠っている)個人金融資産が市場に出てくるように仕向けるのである。銀行や郵貯に預けた預金は、どのみち国債などに化けて国の無駄使いを助長しているだけなので、それで個人がより良い生活をするほうが理にかなってもいる。
カネ持ち優遇で不公平だという批判が出るだろうが、カネ持ちがカネを使うことを奨励するのは、優遇でも不公平でもなく、立派な政策である。実際、アメリカは相続税を徐々に引き下げ、2010年に1年間だけゼロにした。
その後、再び引き上げているが、そういう減税政策が景気を下支えしたこともあって、アメリカは2008年のリーマン・ショック後の金融危機を乗り切ることができたのである。日本も、カネを持っている人間にカネを使わせる政策に転換し、需要を生み出さなければならない。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号