やはり中国では、日本人の常識にかからないことが平気で起こる。ジャーナリスト・富坂聰がレポートする。
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久しぶりに飛び出した食品安全問題が中国の人々の話題をさらっている。
中国の食品安全問題といえば日本では毒ギョーザ事件や段ボール肉まん事件がすぐに思い出されるが、いずれも北京オリンピック前のことだ。すでに日本人には遠い記憶になりつつあるが、中国ではその後も毒ミルク事件など大小さまざまな食品問題が世を騒がせ続けている。
そんな中国にあって、また大きな話題となっているのが山東省高蜜市の養鶏場で起きた事件である。
これは多くの食品偽装事件と同じように、テレビ局の潜入取材による告発から始まったのだが、とにかくその映像が衝撃的だ。
問題は、養鶏場が成長を促すホルモン剤や抗生物質、抗ウイルス薬など計18種類もの違法薬物を使っていたことにある。
隠しカメラを持った記者の取材に対し養鶏場のオーナーは悪びれた様子も見せず、「わずか30グラムだった雛が、たった40日間で2.5キログラムにまで成長するんだ」と答えているのだが、記者が隠し撮りした養鶏場の鶏は、みな羽毛がスカスカで地肌がむき出しの状態で一見して不健康であった。
さらに衝撃的なのは、鳥の死体がごろごろ転がっているということだった。
死体を前に「病気なのか?」と質問する記者に対して、養鶏滋養のオーナーは、「あまりに早く重く育つために、小さな心臓が耐えられなくなるようだ」と答える。
結末は、これまでの多くの事例と同じように、養鶏場もそれを監督する当局の側もともに違法薬物を使ってはいけないという基本的な認識も意識もなかったという話のようだ。
こうした中国の食品事情に接すると、上海蟹の季節と言われてもなかなか食指は動かない。