カニのお取り寄せが好調だ。2012年の楽天年間ランキングで「カット済みズワイ蟹」(福井県・増米商店)が9位を獲得。Yahoo!ショッピングの年間ランキングでも、同社の「かにしゃぶカニ鍋セット1.2kg」が4位を獲得、ミネラルウオーターを除くと、食品で唯一のランキング入りを果たした。ぐるなびのお取り寄せサイト「ぐるなび食市場」の月間ランキング(11月)では、「山陰沖産の親がに」(鳥取・フォーシーズン)が1位に輝く。
インターネット上には、カニ通販サイトとともに、通販の比較サイトが乱立。もちろん、カニの通販はインターネットだけではない。この時期、電話で申し込みができる新聞の1面広告が目に付く。
通販の価格帯には幅がある。例えば足が取れているなど“ワケあり”商品は数千円、皇室へ献上しているクラスの献上ガニのセットは3万5000円(越前ガニ倶楽部)。ズワイガニ(松葉ガニ)、タラバガニ、毛ガニ、花咲カニと、産地や種類も豊富にそろい、食指をそそる。
冬の味覚と言えば、カニのほかにも、ふぐ、カキ、ブリと多彩だ。そんな中、なぜ通販ではカニ人気が突出しているのか。カニ通販の強みについて、通販評論家の村山らむねさんに聞いた。まずはその色に注目。
「インターネットでは“赤いもの”が鉄板です。インパクトがあるし、食欲を増す色なんですね。高級トマトや赤ワイン、牛肉なども好まれる。カニも、通販が始まった初期の頃から人気でした」
次に村山さんが指摘するのは、直送による低価格化と、調理の手軽さだ。
「通販を運営しているのは、主に水産会社です。水産会社が直送するため、問屋などを中抜きでき、価格が抑えられます。また、主婦にとっては、調理の手軽さも魅力です。通販では、1杯丸ごとより、むき身を中心とした商品が人気です。カニしゃぶは、解凍するだけで、他の食べ物とは全然違う、あの絶品が味わえる。人が集まる年末年始などには、非常に助かりますよね」
ある調査では、デパート、上野アメ横、郵便局、テレビ通販、ネット通販、5つのカニ平均価格を比較した結果、ネット通販が一番安いという結果が出ている(2011年12月『DIME』調べ)。デパートの価格はネット通販のそれの、1.4倍ほどだった。
とはいえ、通販ならではの注意点もあるようだ。「冷凍のカニを家で解凍する場合、解凍の仕方によって味が微妙に変わってくるんです。美味しくいただくためには、説明書をよく読んで、解凍に気を配る必要があります」と、村山さん。ひと手間を惜しまないことが、美味しいカニを味わう秘訣と心得たい。
魚介類の国民1人1日当たりの摂取量は年々減少傾向にあり、この10年で、4割近く減った。カニも例外ではないようで、年間の世帯1人当たりの平均購入数量も、2000年の375gから2010年は238gと、4割ほど減っている(総務省「家計調査」)。一方で、通販市場全体は絶好調だ。すでに市場は5兆円を突破、2011年は「食品・産直品が大幅に拡大した」という(富士経済調べ)。カニの通販業者が続々と出現する背景には、通販ブームに乗って、カニ消費量を増やしたいという狙いもあるようだ。
前出の村山さんはこう指摘する。
「カニを一度食べると、その美味しさに気づき、リピーターになる人が多い。次は産地で食べたいと、産地まで足を運ぶ人も増えていると思います」
底冷えするこの季節、カニを家族で囲む贅沢は身に沁みそうだ。