2012年の「新語・流行語大賞」は『ワイルドだろぉ』、「ネット流行語大賞」は『ステマ』、「女子中高生ケータイ流行語大賞」は『てへぺろ』など……、今年を彩ったキーワードの数々。
こうした「今年の流行」として認定されたキーワードを、“言葉のプロ”はどういった視点で見ているのだろうか? コピーライターとしてカンヌ国際広告祭PR部門銀賞をはじめ多くの賞を受賞、『その日本語、お粗末ですよ!』(宝島社新書)の著者でもあるタカハシマコトさんはこう語る。
「新語・流行語大賞は、やや“お粗末な言葉だな”と感じてしまうことが多いですね。それは“言葉そのもの”よりも“授賞式に来てくれる人”で選ぶ要素があり、言葉より“人に与える賞”になってしまっているからでしょうか。
ちなみに今年、剛力彩芽さんは『ベストドレッサー』など8冠を受賞していますが、『ベストジーニスト』や『ベストドレッサー』といった賞がテーマを重視した人ということより、その年話題になった芸能人やスポーツ選手が獲るのに近いといえます」
一方、ネット流行語大賞やケータイ流行語大賞など、ネット系の流行語はどうだろうか?
「これまでの受賞ワードを見ても、“人”を意識していない分、こちらの2つの方が“実際に使える言葉”が多いと思います。ただネットやケータイは言葉の世代交代が速いので、賞に選ばれた言葉を使おうと思っても、元々のユーザーは飽きていたり、もう使っていなことも。
だから例えばサラリーマンのお父さんが、こういったキーワードを流行語として知った場合は、娘や若い部下相手に使うのではなくて、同世代との会話で “ネットリテラシーが高そう”という演出に使う方が、有効だと思います」(タカハシさん)
正しい言葉遣いも大切だが、ウィットを感じさせる表現や時代性を反映する言葉は、流行語の良さといえるだろう。しかし 「流行」という名の下に、“言葉が消費されてしまっている”、“言葉の乱れが進む”と嘆く人も少なくない。
「こうして毎年さまざまな新語が生み出されるのは、決して“言葉の乱れ”ではないですし、今に始まったことではありません。言葉は変わるものですし、一人ひとりが使い方によって変えられるものです。
特定のコミュニティでしか通じない、“内輪でしか通用しない言葉”ばかりが増えてしまうのは残念ですが、こうした賞があることで、大人・女子中高生・ネットユーザーなど立場の異なる人の言葉が、改めて“みんなの言葉”として共有化されるのは、いいことだと思います」(タカハシさん)