2012年のサッカー界の大物引退選手といえば、ゴン中山こと、J2コンサドーレ札幌所属の中山雅史(45)。その一方で現役続行にこだわり続けるベテラン選手が、キング・カズこと横浜FCの三浦知良(45)だ。
ゴンとカズを語るときには、「Jリーグ誕生」「ドーハの悲劇」「ジョホールバルの歓喜」など、日本サッカー界のエポックメイキングな出来事が浮かび上がってくる。だが、意外と知られていないキーワードが『教師びんびん物語』である。
1988年にフジテレビ系で放映され大ヒットしたドラマで、田原俊彦演じる熱血教師・徳川龍之介と野村宏伸扮する後輩教師の榎本英樹の絶妙なコンビネーションが茶の間に大受けした。
カズは、まだブラジルでプレーしていた1987年に田原と出会う。すると、その年(トシ)にレギュラーを獲得し、日本人初となるブラジル全国選手権に出場。翌年には、ブラジルリーグで日本人初の得点を挙げ、ブラジル国内でカズの名が知れ渡るようになった。田原と出会って以降、カズの運命が大きく好転し始めたのだ。
カズは今でも田原との親交が深く、コンサートやディナーショーのみならず、新曲発表会にまで足を運ぶほど、心酔している。Jリーグブームを牽引したといっても過言ではない『カズダンス』は田原の踊りを採り入れたものといわれているし、Jリーグ初代MVPのときに着用した真っ赤なジャケットは、田原の10周年コンサートのときの衣装をイメージしたものだとされる。
一方のゴン中山は、『教師びんびん物語II』(1989年放送)で榎本に恋をする同僚教師役を演じた生田智子と、1996年に結婚。無名時代からの交際を成就させた。
当時は日本代表メンバーからはずれていたが、1997年のW杯予選で復帰すると、中山は代表に欠かせない存在に。1998年のフランスW杯ジャマイカ戦で日本人初得点を挙げ、2002年にも日韓共催W杯の代表に選出されている。中山にとっては、生田との出会いが飛躍のタイミングと重なったのである。
カズ・ゴンとともに、日本サッカーは世界に類を見ない成長を遂げた。その陰には、カズが挫折したときに横で励ました田原俊彦、ゴンを常に支え続けた生田智子という『教師びんびん物語』コンビの存在があったのである。もし2人がいなければ、今日の日本サッカー界は“びんびん”にならなかった……かもしれない。