3.11の大津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市。7万本の松原で1本だけ残った「奇跡の一本松」は今、復興のシンボルとして保存作業が進められている。
「根本から切断し5分割した幹は、愛知県の製材所で芯のくり抜き作業が終了し、現在、滋賀県で防腐処理が施されています」(陸前高田市建設部・阿部勝さん)
さらに12月になってスタートしたのが、一本松の“根”の保存作業。横幅5m、重さ3.5tにも及ぶ巨大な切り株は、岩手県大船渡市の事業所で水洗いを終え、年内はこのまま自然乾燥させて、年明けから防虫・防腐処理を行う予定だという。
「高田松原を守る会」副会長・小山芳弘さん(60才)は、感慨深げにこう話す。
「これまで土の中に埋もれていた根が、目に見える形で残されるのは頼もしい限り。なぜ一本松だけが津波に耐えることができたのか、その力強さをこの根が後世に伝えてくれるでしょう」
2013年2月には幹が元の場所に立つ形で、根の部分は本体とは別に屋内展示され、復興の象徴が“復活”する。しかし、本体のモニュメントはどんなに手間をかけても10年ほどしか持たないそう。そこで前出・小山さんは“後継樹”の育成にも力を注いでいる。
「震災後の2011年初夏に松原を歩いていた際、偶然にもたった1本だけ、小さく芽吹いている松の苗を見つけたんです。今は自宅で大切に育て、15cmほどに成長しました。ある意味、これこそ一本松といえるのかもしれません」
※女性セブン2013年1月10・17日号