2011年に1オンス(約31.1グラム)=1923ドルの史上最高値をつけた金価格。一度下落したものの、2012年後半には再び上昇しつつある。2013年の金価格について金のスペシャリスト、豊島逸夫氏が解説する。
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まず金市場に関する私の大局観から説明しておきたい。
振り返れば、2011年はギリシャショックに米国債格下げが相次ぎ、先物主導で金価格(ニューヨーク先物、1トロイオンス当たり)が1923ドルまで急騰した「史上最高値更新の年」だった。2012年はその巻き戻しで、先物売りに現物買いが交錯するという典型的な「調整の年」といえる。そして、2013年は「再び新高値に挑戦する年」となり、2014年は「下げの年」になるのではないか、と見ている。
その最大の理由は、やはり「ドル不安」にある。
リーマン・ショックを契機に米国のマネタリーベース(通貨供給量)は激増し、ドルが市中にばらまかれる一方、金の生産量は10%程度しか増えていない。2012年9月には「QE3(量的緩和第3弾)が打ち出され、ますますドルの価値が希薄化するなか、代替通貨として金の価値が高まってきたわけだ。つまり、金価格が上昇したというより、ドルの価値が薄まったというのが正しい見方だろう。
FRB(連邦準備制度理事会)のコメントを見ても、「通貨量のこの激増ぶりは明らかに異常だ。ただ、こうしなければならないほど経済状況が悪い。有事対応だ」などとあるように、米国はFRBの“お墨付き”でこれからもドルをばらまくに違いない。しかも、それを平時に戻るまで続ける以上、当面、金価格は上がるしかない状況に置かれているのだ。
オバマ大統領の再選も「ドル安・金高」に拍車をかけるのは間違いない。早くも2013年1月には大型減税の失効や歳出の自動削減が重なる「財政の崖」が立ちはだかっており、それをどうにか回避しようとしても、財政の健全化は見込めない。それに伴って米国の債務危機の可能性が高まっていくのは必至の情勢だ。それがますますドルの信認の低下につながり、金価格を大きく後押しする材料となろう。
希薄化するのはドルだけではない。日銀も追加緩和を繰り返し、これまでスペインやイタリア国債を買い支えながら市中にユーロを放出してこなかったECB(欧州中央銀行)も、いよいよなりふり構ってはいられなくなる公算が高い。欧州経済全体がマイナス成長に陥れば、ECBがFRBの後を追うような格好でユーロを垂れ流すことも十分に予想される。
つまり、2013年は米日欧がこぞって本格的な量的緩和に乗り出すことで、ドル、円、ユーロという主要通貨の“ばらまき合戦”が起こり、金価格は高値圏にとどまるどころか、場合によっては史上最高値の更新もあり得るのではないか、と見ている。
※マネーポスト2013年新春号