いわゆる“アベノミクス”で日本再生に挑む安倍晋三氏だが、課題は数多い。大前研一氏は、金持ちにカネを使わせること、公的部門のコストをドラマチックに削ることを挙げ、こう続ける。
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「マイナンバー制度」も新政権が最初に取り組むべき課題である。民主党政権が国会に提出した社会保障・税番号制度を導入するマイナンバー法案は廃案になったが、これは幸いだった。住基ネットをベースにした、あんないい加減な制度を導入したら、効果がないのにコストだけかかってしまうからである。
では、どうすべきか? 最初に「行政コストを10分の1にする」という目標を掲げ、そのためには何をしなければならないか、逆算すべきである。そうすると、住民の安全・安心のために減らせない警察官、消防士、医師、看護師などを除く地方公務員は、10分の1以下に削らなければならないことがわかる。
その方法は、行政の手続き業務をすべて電子化する「オールサイバーソサエティ」しかない。その時には、マイナンバーがパスポート、運転免許、健康保険、戸籍など、ありとあらゆるもののIDになり、すべての機能が1枚のICカードに収まってしまう。すでにシンガポールや韓国で実現していることなので、日本にできないわけがない。
国会議員と地方議員の定数も半分以下にすべきである。とくに地方議員は、今や候補者の顔ぶれが職のない若者と暇を持て余している老人のハローワークのようになっているので、歳費は少なくとも10分の1にしてかまわないだろう。さらに、市区町村長は基本的にボランティア(無給)で務めるのが世界の先進国の常識である。
※週刊ポスト2013年1月1・11日号