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保険会社の姿勢“請求されねば支払わない”で不払いが多発

 保険金を保険会社は積極的にははらってくれない。もっとも多いのが、“請求勧奨漏れ・支払い漏れ”で、生保、損保ともに不払いの大多数を占めている。

 たとえば車の接触事故に遭ったとき、車両保険が下りて修理代金は受け取ったが、修理時の代車費用や見舞金などの特約部分は請求し忘れてしまったというケースなどだ。保険会社は請求がないものについては支払わないというスタンスだったため多発した。

 交通事故訴訟の専門家である弁護士の加茂隆康氏がいう。

「金融庁の業務改善命令により、支払い漏れがないように保険会社が請求勧奨するよう努めていることになっているが、実際はまだまだです。その理由は意図的な支払い漏れに加え、保険会社側の処理ミス、適正な支払いへのルール化や管理、チェック体制が不十分であったり、担当者の商品知識不足や認識ミスだったりする。加入者本人がちゃんと把握していないともらえないという状況です」

 保険会社は極力払いたくない。払ってほしい加入者が無知ならば、正当な額の保険金さえ受け取れないのである。

 不払い問題に詳しいファイナンシャルプランナーで生活生計塾クルー取締役の清水香氏がいう。

「多くの保険加入者が、どのようなときにいくら受け取れるのかをちゃんと理解できていません。たとえば、近所で落雷があり大型の液晶テレビが壊れたとき、家財の火災保険が下りる、ということを知らない人は意外に多い。契約の内容を理解せずに契約することが多いからです。

 自動車保険や火災保険は、車や住宅を購入するタイミングで契約することが多く、保障内容は担当者任せでどうしても契約を急ぎがちなもの。本来は、災害など不測の事態をカバーする損害保険こそ、損害保険販売を専業とするプロ代理人店などからアドバイスを受け、契約するのが安心です」

 約款の内容を完璧に理解することが理想だが、それは困難だ。特に生命保険や医療保険などの内容は複雑になりがち。ならば、自分が理解できるようなシンプルな保険ばかりを組み合わせるも1つの手だろう。

 清水氏がいう。

「特約をつけ過ぎることは保険料が高額になることも問題ですが、保障内容が複雑すぎて自分で理解できず、肝心なときに役立たなかったり、あるいはそもそも請求し忘れるリスクもあります」

 自分が理解できるシンプルな組み合わせが、もっとも取りこぼしが少ない。

 たとえば、交通事故に遭ってしまい、入院することになった。加入していた医療保険の担当者は、入院給付金の請求のみを促してきたが、約款を熟読し理解を深めておけば、まさに彼が請求勧奨漏れをしていることがわかる。

 医療保険では入院給付金のほかに、通院給付金も請求できるケースがある。入院すれば通院することにもなるだろうから、併せて請求したいところだ。

 この事故や病気であれば必ず保険金が下りる──そう自信を持って保険会社に請求できるかどうかが重要なのだ。

※週刊ポスト2013年1月1・11日号

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