東京・新宿歌舞伎町で狭小のバーや飲食店が軒をつらねる「ゴールデン街」。第二次大戦後、闇市として登場したその一帯は、昭和40年ごろから「ゴールデン街」と呼ばれるようになり、老舗の文壇バーには多くの著名な作家や編集者が足を運んできた。そのために「若者は行きづらい」「ぼったくられるのでは」「ちょっと危険な雰囲気」……、そんなイメージが定着していたことは否めない。
こうした一見さんお断り的なムード漂う「ゴールデン街」も、ここ数年ではイメージを刷新させようとブランディングに力を入れ始めた。公式ポータルサイト「ザ・ゴールデン街」を立ち上げ、若い女性が気軽に立ち寄れるような工夫も目を引く。2012年には、夏は納涼感謝祭が、秋には30歳以上を対象にした「街コン」である「大人の昭和コン」も開催された。レトロな店舗の中で、好きな映画や演劇の話に花を咲かせるのは一興だ。
ゴールデン街に一度足を踏み入れると、常連客となって入り浸る人も少なくない。ゴールデン街のとある店舗で働くナース姿のスタッフさんが、そうした人の特徴を教えてくれた。
「初めは見世物感覚で来られる団体客さんが多いよね。その中で何回か足を運んでくれる人たちがいるんだけど、気づくと1人になっている。そういう人はね、必ず誰かと話がしたいな、なんか寂しいな、っていう人が多いの。お酒は、楽しくお話できるついでみたいなもので、メインはお話できることなんだよね」
そうした常連客の中には、実際に「ゴールデン街」で働き始める人も少なくないという。
「気付くとスタッフになってる人もいるよね。仕事終わりに、他の店舗の店員さんと一緒にお話する時間も楽しいの。やっぱりみんな寂しがり屋だから、温かい人たちに囲まれてたいんだと思うよ。ホームなんだよね、ここは。都会でぽろっとホンネをこぼせる場所って貴重でしょう?」(同前)
ゴールデン街には普通の繁華街とはひと味違う魅力があるようだ。