2013年の注目される働き方はなにか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が語る。
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あけましておめでとうございます。
2012年を雇用・労働の観点で話題になったキーワードを振り返ってみると……。
ソーシャルメディアを活用した双方向の就活「ソー活」、ノマドブーム(および、ノマド叩きブーム)、定年延長および40歳定年制の検討、派遣法の改正、岩波書店の通称「コネ入社」、相変わらずの新卒就職難、倫理憲章改定により大学3年の12月1日スタートになっての初の就活、ブラック企業、若年層の早期離職率の業界別データ開示、ネットなどを活用してビジネス・パートナーを探し依頼するクラウドソーシング、総選挙で維新の会がマニュフェストで打ち出して話題になった(一部は途中で方針変更)解雇規制緩和論と最低賃金撤廃論、さらには東大秋入学による新卒一括採用が変わるかどうかという議論、グローバル人材育成論……。まだまだありますが、働き方に関する話題がいっぱいでしたね。
雇用・労働をめぐる問題は山積していますが、2012年はその問題の真実が可視化されていった年だと思っています。
特に厚生労働省による業界別早期離職率の開示は、みんながうすうす「サービス業って離職率高くないか?」などと感じていたことが可視化され、話題になりました。もちろん、この開示により若者が特定の業界を避けるのではないか、ますます労働意欲が下がるのではないかという批判もありましたが、私は雇用・労働をめぐる事実はどんどんガラス張りに開示するべきだと考えていますので、評価しています。
ブラック企業は相変わらず話題で、日本の職場の劣化が止まらないと再認識した次第です。ただ、この言葉が広がったことにより、問題として認識したこと、みんなが異議申立てできるようになったことは大事なポイントです。11月に発売された『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(今野晴貴 文春新書)はベストセラーになりそうな売れ行きで、既に4刷だとか。ネット上ではややもすると茶化したように取り上げられがちなブラック企業問題。これまで出た書籍の中にもその手のものはありましたが、これは硬派で読み応えがありますのでオススメですよ。
ノマドブームはあっという間に去ったというか、風化された印象があります。まあ、理解されづらかったというのが本当のところでしょう。地に足がついていないことが明らかでした。ノマドブームの仕掛け人たちがもうこの言葉を使わないことが印象的です。
さて、2013年ですが、今年話題になるのは「サラリーマンの前途」でしょう。サラリーマンの働き方の再構築が始まる予感です。特に話題となるのは、「ノンキャリ(ノンエリート)正社員」です。職務を限定した正社員という働き方が出てくるかなと期待しております。ノンキャリ、ノンエリートというと、いかにもダメ社員の印象を抱くかもしれませんが、違います。上のポジションを目指すのではなく、自分の職務に責任を持って働く、と。そういえば、昨年、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)という書籍を発表し、おかげ様で話題になったのですが、「ノンエリート論」としてご評価頂きました。別にジムを揶揄しているわけではありません。むしろ、戦争はジム対ザクで動いていったわけで。
サラリーマン漫画の金字塔、『社長島耕作』(弘兼憲史)でも、主人公の島耕作が社長を辞任するかのような展開になっています。まあ、島耕作といえば成功・出世・情愛というサラリーマンの夢を体現してきたわけですが、彼がどんなふうに身をひくのか、サラリーマンに影響を与えそうな予感です。
雇用・労働をめぐる報道や議論はいつも、エリートか、とてもかわいそうな人を前提とした話になりがちですが、今年こそ、普通の労働者の普通の働く幸せを議論したいところです。今年もよろしくお願いします。