【書評】『美しいソウル 韓モダンの旅』高恩淑/阪急コミュニケーションズ/1680円
【評者】柴口育子(フリーライター)
ソウルは海外旅行先として異常にリピーター率が高い。10回や20回行ったことがある人がゴロゴロいるから、このところリピーター向けのガイド本が次々発売されている。
この本もその1冊だが、まず表紙を筆頭に写真の美しさが群を抜いている。
さらに、著者はソウルの北村育ちで、韓国版『an・an』や『マリ・クレール』の元編集長。RIAKOというペンネームで、ホームページを通じて日韓の情報も発信している。韓国の伝統もお洒落な最先端の情報も知り尽くしている人だから信頼できる。
彼女は東京行きの飛行機の中で会ったソウル歴25回の日本人が、明洞や東大門市場でショッピングし、韓国料理を食べて、汗蒸幕(韓国版サウナ)でアカスリする程度とありきたりのソウルしか知らないことに驚いて、「私の心の中にある美しいソウルを、韓国を好きな日本人に教えてあげたい」と、本の執筆を思い立ったという。
テーマは「韓国の伝統美×欧米のモダンスタイル=“韓モダン”」。それに即して、韓服、韓屋、寝具、白磁、食べ物、街を紹介しているから、現代の日本人にも魅力的なものばかりだ。
たとえば、韓服はヨン様の映画『スキャンダル』の衣装を担当したデザイナーのもの、韓屋はドラマ『私の名前はキム・サムスン』などのロケに使われた高級旅館、白磁はエリザベス女王も店を訪れたという作家のもの、料理は知る人ぞ知るお寺の中のカフェetc…。
残念ながら、お店はすでに日本のガイドブックや雑誌のソウル特集で紹介されていたところがほとんどだ。だが、韓服について短い文章で詳しい説明をしていたり、キムチの正しい食べ方は「切らずにくるくる巻いて、(中略)葉も茎の等しく味わうべし」と書いていたり、ちょっとした文章がひと味違う。
この本はいわばリピーターの初心者向けだろう。著者はもっと知識も情報も持っているに違いないから、続けてリピーターの中級者向け、上級者向けを出してほしい。
※女性セブン2013年1月10・17日号