安倍新政権発足で政界はご祝儀ムードだが、国民の政治不信がおさまったわけではない。誰よりも政治への懸念を募らせているのが、元政界関係者の長老たちだ。ここでは、自民党改革派として「YKK」トリオを結成した山崎拓氏(76)の直言を聞こう。
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これからの自民党に不安があるとすれば、安倍総理が「靖国参拝をする」と主張した時に、それに意見する人がいるかどうかということです。
安倍さんは日中間の摩擦をいたずらに増幅させ、国益を損ねるようなことはしないと思いますが、一方では勇気を持って直言できる人が周囲にいるということも重要。特に、こうして大量の議席を得た時にこそ、「嫌われ役」が必要だと思います。
小泉(純一郎・元首相)さんも総理在任中に靖国参拝を公約に掲げて、実際に参拝もしました。総理を辞す直前の2006年だけは、終戦記念日の参拝を実行しましたが、それ以外は前倒しで参拝した。
就任直後からYKKで相談してきましたし、私と加藤絋一さんで口説いたわけです。その時は渡邉恒雄さん(読売新聞主筆)も説得に協力してくれましたし、渡邉さんと私と小泉さんで議論したこともありました。
ところが、今の自民党で安倍総理に意見できる人がいるかと考えると、見当たらない。
「お友達」や「チルドレン」といわれる人は、安倍総理の意向に反することは口にしないでしょう。
谷垣(禎一・前総裁)さんは優れた政治家ですが、紳士的なのでそういう役回りに向かないように思います。河野洋平さんの息子の太郎さんは党内ではアウトサイダー的な立場ですから、意見しても安倍総理の周囲の声にかき消されてしまうかもしれない。
そうした「嫌われ役」は、自分の主張に自信がないとできません。人から聞いた話とか、数字を並べ立てても通用しない。主義主張をきちんと示さないと、(説得に)迫力が出ませんからね。
【プロフィール】
●やまざき・たく:1936年福岡県生まれ。1972年初当選。防衛庁長官、自民党幹事長、副総裁などを歴任。2012年引退表明。
※週刊ポスト2013年1月18日号