安全保障強化などをうたって総選挙で勝利し発足した安倍晋三政権だが、中国、韓国への慎重姿勢を打ち出し、安全運転に努めている。それは今夏の参院選で勝利し安定政権を築くという目論見があるためだ。
しかし、それでも参院選では自民党に追い風が吹いているとはいえない。今回の総選挙では「1強7弱」と呼ばれる自民党1強体制が生まれたが、自民党の比例代表での得票率は27.6%で、惨敗した2009年総選挙の得票率(26.7%)とほとんど変わらない。政権を取れたのは、多党乱立でつぶし合いが起こり、自民党が漁夫の利を得たからに過ぎない。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏はこう分析する。
「6年前の参院選で自民37議席という大敗を喫し、わずか1か月後に退陣に追い込まれた安倍首相にとって、その時の議員が改選を迎える今回は文字通り雪辱戦でもある。自公で参院の過半数を得るには夏の参院選で自公64議席が必要だ。
有権者の自民党への支持は戻っていないとはいえ、海江田万里・新代表の下で再建をはかる民主党は2大政党の一角から転落し、総選挙と同様に参院選でも第3極政党との票の食い合いが起きれば自民が有利になる。自民党は改選議席が少ないだけにハードルは低い。だからチャンスとみて有権者の反発を買わないように石橋を叩いているわけです」
前回の安倍内閣の後、6年間で6人の首相が交代したのは参院のねじれで政権が安定しなかったことが原因であり、逆にいえば、参院選で与党が過半数を獲得できれば安倍内閣は長期政権の道が拓けてくる。
「政治の混乱に完全に終止符を打つのは参院選だ」
安倍首相は組閣にあたってそう語ったが、国民にとっても、自民党に任せるのか、それともこの先、新たな政界再編で別の政治の道を探るのか、参院選こそが日本のこれからの針路を決める決勝戦なのだ。
※週刊ポスト2013年1月18日号