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七草粥 食べると邪気を払い、顔色良くなるとの言い伝えあり

七草粥には年末年始で疲れた胃を休める効果

 2013年はどんな「食」が登場するのだろうか。食の伝統と文化について、編集・ライターの松浦達也氏が考察した。

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「年明けうどん」「おせちもいいけどカレー」など、この数十年で正月の食卓の風景はずいぶんと変わった。といっても、この数十年が特別というわけではない。日本人の食卓は数十年周期でゆるやかに変わり続けている。中華料理店が日本に定着してからおよそから揚げや餃子などが、当たり前のように一般家庭の食卓に上るようになって、まだ50年ほどしかたっていない。同じく中華料理を起源とするラーメンがご当地色の強い麺料理として認知されていったのもその頃だ。

 新しい料理が定着すると、肩身が狭くなっていく食文化もある。とりわけ「伝統食」はそのあおりを食らいやすい。素材の入手や調理に手がかかったり、味わいとして「わかりやすい旨さ」とは一線を画すものも多い。

 そもそも「食文化」とはなんだろう。大辞林で「文化」を引くと「社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体」とある。つまり、「食文化」とは「社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される、『食』にまつわる行動様式ないし生活様式の総体」となる。

 食関連の有識者はそこに「習慣」「伝承」「定着」といった価値観を盛り込み、「世代を超えて定着するもの」と絞り込んだ定義をすることが多い。しかし核家族化の進行によるコミュニティの変化や、生活様式の消費・再構築のスピードが上がっているため、定義自体が追いつかなくなっている。とりわけ、「庶民の食」≒「B級グルメ」においては情報の流量が莫大になり、ネットコミュニティなども含め、文化を醸成する土台が変わりつつある。

 例えばいま絞り込むなら「多様化する生活様式のなか、家庭/地域といった実態生活圏だけでなく、あらゆる社会的集合体で共有できる、習慣や嗜好などに由来する食生活全般」というような形になるだろうか。

「嗜好」が文化の域に届くこともある。例えば「ラーメン」はもはや文化だろうし、主要な「ご当地ラーメン」も文化と言えるだろう。数年後には「(ラーメン)二郎系」が文化になっているかもしれない。

 だが一方、長く受け継がれてきた「習慣」には何かの意味がある。なぜ1月7日に七草粥を食べるのか。現代では「年末年始で疲れた胃を休める」と解釈されるが、そもそもこの日は「人日の節句」であり、七草を粥に炊きこんで食べることで、邪気を払い、「顔色光沢なり」など10の功徳が得られるという。ちなみに七草を浸した水に爪をつけて、やわらかくしてから爪を切ると、その年は風邪をひかないという言い伝えもある。

 今年も数多くの新しい「食」が登場するだろう。そしてそのすべては文化になりうる可能性を秘めている。文化としての認知は「いい」「悪い」で判断されるものではないが、個人としては「いい」と感じられる食文化のなかで暮らしていきたいものだ。

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