中国の政治状況は依然、予断を許さない。ジャーナリスト・富坂聰氏が“水面下の動き”についてレポートする。
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政権交代を終えたばかりの中国の年の暮、共産党の足元を揺るがすような話題がネットを舞台に湧き上がった。
発信源は、中国の大学教授や弁護士など約70人からなる知識人のグループであった。
彼らがインターネットを通じて発表した要望書は、〈改革共識倡議書〉と題されていた。共産党政権に求めたのはズバリ「政治改革」だった。
政治改革の中でも彼らがとくに指摘しているのは、「党と政府の分離」や「自由な選挙」、そして「報道の自由」など西側社会では至極当たり前なものだが、そもそも共産党政権にとっては絶対に認められないものばかりである。
ネットを通じて突きつけられたこの要望に対し、党は現在のところ静観していて何のリアクションも示していない。
こうした政治改革や民主化の要求ときけば真っ先に浮かぶのが2008年の「〇八憲章」である。ノーベル平和賞を受賞しながらいまだ国家転覆の罪で収監されている劉暁波らが発表したものだが、今回の要望書は「〇八憲章」に比べて穏やかな内容になっていることに加えて、「汚職の撲滅」や「職権濫用の取り締まり」など、庶民が共感する内容が並べられている。
起草者の一人である北京大学の教授はメディアの取材に対し、「要望書の中身は、1982年に改正された中国の現行憲法にある内容に沿ったもので現実的な提案だ」と語っている。
このニュースの興味深いところは、中国が憲法などで歌っている民主的な部分を「実行してほしい」と要求している点だ。中国は憲法の上では非常に民主的であるはずなのだから、実際にもそのようにすべきだと、建前だけのきれいごとは許さないと婉曲的な批判をしているのだ。
彼らが指摘した一つひとつはすべて共産党には頭の痛い問題だが、いずれも自ら憲法にうたっていることだとなれば、こうした要求を突き付けた者を裁くわけにはいかないというわけだ。
政権に対する賢い挑戦と言わざるを得ないが、それよりも重要なのはやはり共産党政権の権威の失墜とガバナンスの低下がこのことからも読み取れるということだ。
政治における「民高党低」の傾向は2013年のキーワードになるかもしれない。