日本はとかく「リーダー不在」などといわれがちだ。だったらどんな人物がリーダーなのか。これまで、さまざまな優秀なリーダーと出会い、リーダーが育成される場面に遭遇してきた大前研一氏が、国際的にどこへいっても通用するグローバル・リーダーについて解説する。
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リーダーの育成でまず重要なことは、適正な能力評価ができる人事データベースを作って将来のリーダー候補を若いうちに見つけ、有能な上司のもとで鍛えることだ。その時のチェックポイントは、売り上げをどれだけ伸ばしたかというような数字も重要だが、それよりも新しいポジションに来て学ぶところから人を指導するまで、つまりラーニングからリーダーシップを発揮するまでの時間である。その転換が数週間、長くても3か月以内でなければならない。
私の経験からすると、優秀なリーダーは皆「学びの天才」であり、とくに「スピード・ラーニングの達人」である。
私が知る限り、国際的にどこに行っても通用するグローバル・リーダーには共通のパターンがある。それは、一番最初によく人の話を聞き、実態を分析して正しい方向性を見つけるまでは謙虚そのもので全く先入観や偏見を持たずに取り組む、ということだ。
そして改革案が出てきたら、強いリーダーシップで周囲を説得して断行する。このフェーズの切り替えは3か月でやることが重要で、2年も3年もかけたら意味がない。
ところが日本人のリーダーは、だいたい最初にそれをやらず、辞める間際になってから「あれをやりたい、これをやりたい」といい出す。
その典型は政治家だ。
野田佳彦氏や菅直人氏など民主党の首相もそうだし、石原慎太郎前東京都知事に至っては80歳になって「国政でやり残したことがある」とうそぶいている。国会議員を25年間も務めておきながら、今ごろ何をいっているのだろうか。
※週刊ポスト2013年1月18日号