デフレや外交問題など厳しい状況が続く日本の現状が続いているものの、作家・三好徹氏(81)は、「言わずに死ねるか!」と日本の向かうべき道を指摘する。
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僕はアメリカ人に生まれたかったとか、中国人がいいとは思ったことがありません。ということは、日本人に生まれてよかったということでしょう。80過ぎまで、書きたいことを書くことができましたから。カネのために自分の書きたくないものを書くようなことはしなかった。
だから後の人たちに言いたいのは、志を持って、仕事でも何でもやりきるということ。志の通りにできるかどうかは別として、まず志のない人はダメですね。
それに戦争は絶対にしないでほしい。僕は旧制中学2年修了で試験を受けて14才で陸軍幼年学校に入学した。軍籍にあった最後の世代なんです。
『興亡と夢』という作品で、二・二六事件から敗戦までを書いたけれど、戦争というのは本当に残酷なものですよ。例えばガダルカナルでは3万人の兵隊のうち2万人が死ぬんだけれど、うち半分以上は餓死や病死だったんです。
戦争を体験した人は、その悲惨さを知っているから戦争をしたがらない。日清戦争は戦死者が少なかったけれど、日露戦争はひどい戦争だったから、体験者は戦争をしたがらなかった。
昭和に入って満州でやれやれとけしかけたのは、日露を経験していない連中。戦争の過酷さを知らない連中のほうが威勢のいいことを言うんです。
だから僕には、石原慎太郎とか安倍晋三とかの国威発揚みたいな言葉には違和感がある。「国防軍にしてなぜ悪い」という議論があるけれど、軍隊と言えないところがあるから戦争にならないんですよ。
自衛隊という勇ましくない名称にしているのが、日本のいいところなんです。勇ましい名前にしてもろくなことはありません。満州の鉄道を守るのも「国防」になってしまったんですからね。
【プロフィール】
●みよし・とおる/1931年、東京生まれ。1950年に読売新聞社入社。1959年『遠い声』で作家デビュー、1967年『風塵地帯』で日本推理作家協会賞、1968年『聖少女』で直木賞受賞。ロングセラー『チェ・ゲバラ伝』など著書多数。
※週刊ポスト2013年1月18日号