スポーツ

眞鍋監督がiPadで女子力引き出す様を解説した番組に作家感心

 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が年末年始の特番のなかから、印象に残った番組について振り返る。

 * * *
 年末年始、テレビでは大量の特番が流れました。が、「目からウロコ」の快感と発見をくれた番組は、そう多くはありません。その中で「あっ、なるほど!」と、思わず膝を打ってしまった番組が。NHK BS1の「為末大が読み解く! 勝利へのセオリー 世界とたたかう“逆転”の戦略」(1月3日放送)。

 ロンドン五輪の女子競技では、なんと言っても「なでしこジャパン」が注目を集めた。けれどもよく考えると、メダルをとった女子バレーだって、すごい。「28年ぶり」のメダル獲得という偉大さ、もっと語られていいはず。と、元アタックナンバーワン少女だった私は感じていました。

 この特番は、そのあたりをぴたっと押さえてくれた。

 日本女子バレーの眞鍋政義監督に、プロ陸上選手の為末大氏がインタビューで肉薄。メダルにたどり着けた「秘密」と「理由」を、名将・眞鍋監督の言葉から引き出していく、という構成でした。

 眞鍋監督と言えば、まず「データバレー」という言葉が浮かぶ。コートサイドで、手にiPadを持ったあの姿が印象的。

 でも、「データバレー」って、いったい何なのか? 手にしているiPadは、具体的に何に役立っていたの? 中継や解説をいくら熱心に聞いても、今いちよくわからなかった、という視聴者が実は大量にいるのではないでしょうか。もちろん私もその一人。

 チームスポーツといえば、いつでも監督の采配が注目される。特に女子の場合は、監督によるメンバーの人選や作戦が一人一人の選手の感情に深く響き、勝敗に大きく影響していくもの。男子に比べ、女子はチームへの愛着や結束力は強いとされる一方で、お互いの間に嫉妬やねたみといった「感情」が出ることもまた事実のようです。

「あなたをメンバーに選んだ理由は、この決定率の数字です」

「選ばなかった理由は、この効果率のためです」

 iPad画面の「客観的数字」を掲げる。すると、泣く子が黙る。納得する。諦める。

 決して監督の「気分」や「好き嫌い」ではなく、あくまでデータを根拠にスタメンや選手交代を決めているのだ――iPadを手にした姿を通して、眞鍋監督はそう表現していたのでした。ネガティブな感情をバサリと潔く整理する道具として、「数字」「データ」が使われ、威力を発揮していたというデータバレーの秘密が、番組からよく伝わってきました。

 データとは、優れた名将が優れた小道具として使いこなした時に、大いなる力を発揮する。女子力を上手に引き出す、新しいツールだ。なるほど。目からウロコでした。

 スポーツジャーナリズムは、こうあってほしい。紋切り型のいわゆる「感動秘話」「苦闘物語」ばかり追い求めるのではなくて、痒い部分に手を伸ばし、観客の中にくすぶっている「もやもや」を捉え、取材で追求し、平たい言葉で明快に腑分けし、視聴者のもやもやを晴らしてほしい。

 そうすればスポーツへの理解はぐんと深まる。もっとその種目を見てみたい、と思う。秘められたスポーツの魅力に気付くことで、ファンはますます増加していくに違いないのですから。  

関連記事

トピックス

ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さんが刺傷され亡くなった。送検される高野健一容疑者(左・時事通信フォト)(右が佐藤さん、Xより)
〈愛里生きてね〉〈ずっとだいすきでいたいから〉“最上あい”さんと高野健一容疑者の出会って3か月後の“親密LINE”を詳報【高田馬場ライバー刺殺】
NEWSポストセブン
米津玄師の新曲MVに出演した羽生結弦(米津玄師の公式スタッフのXより)
羽生結弦、米津玄師との“奇跡のコラボ”で見せた4回転ルッツ 着地失敗で封印したジャンプが仙台で復活、より強くなる“災害に対して祈りと希望を届けたい”という気持ち
女性セブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さんが刺傷され亡くなった。送検される高野健一容疑者(左・時事通信フォト)(右が佐藤さん、Xより)
〈シンママとして経済的に困窮か〉女性ライバー “最上あい”さん(22)、高野容疑者(42)と出会った頃の「生活事情」 供述した“借金251万円”の裁判資料で判明した「2人の関係」【高田馬場・刺殺事件】
NEWSポストセブン
角田信朗が再婚していた
格闘家・角田信朗が再婚していた!「本当の意味でのパートナーに出会えた」「入籍はケジメです」お相手は23歳年下の“女将さん”
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSにはさmざまな写真が公開されている
「死者のことを真摯に思って反省しているとはいいがたい」田村瑠奈被告の父に“猶予つき判決”も、札幌地裁は証拠隠滅の可能性を指摘【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・最上あいさんが刺傷され亡くなった(左・Xより)
〈オレも愛里なしじゃ生きていけない〉高田馬場刺殺事件・人気ライバー“最上あい”さん(22)と高野健一容疑者の“親密LINE”《裁判資料にあったスクリーンショット》
NEWSポストセブン
体調不良を理由に休養することになったダウンタウンの浜田雅功
《働きづめだった浜田雅功》限界だと見かねた周囲からの“強制”で休養決断か「松本人志が活動再開したときに、フル回転で働きたいからこそ」いましかないタイミング
女性セブン
いまだ精神鑑定が続く、瑠奈被告
《すすきの頭部切断事件》現場のホテルが格安で売りに出されていた 肝試し感覚で利用者増加、当該の部屋には「報道にあったお部屋です」の説明文
女性セブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・最上あいさんが刺傷され亡くなった(左・Xより)
《生々しい裁判記録》「3万円返済後に連絡が取れなくなった」女性ライバー“最上あい”さん(22)と高野健一容疑者の出会いから金銭トラブルまでの全真相【高田馬場刺殺事件】
NEWSポストセブン
渡米した小室圭氏(右)と眞子さん(写真/共同通信社)
「さすがにゆったりすぎる…」眞子さんが小室圭さんとの買い物で着ていたロングコートは5万6000円の北欧の高級ブランド「通販で間違えて買った」可能性
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《没後1年のトラブル勃発》八代亜紀さん、“私的写真”が許可なく流出する危機 追悼CDの特典として頒布予告、手がけるレコード会社を直撃
女性セブン
おもてなし計画を立てる大谷翔平(写真/アフロ)
【メジャー開幕戦】大谷翔平、日本凱旋でチームメートをおもてなし計画 選手の家族も参加する“チームディナー”に懇意にしているシェフを招へいか、おすすめスポットのアドバイスも
女性セブン