元フジテレビの人気アナウンサーだった千野志麻(35・本名=横手志麻)は、現在、自動車運転過失致死傷罪の容疑者で、法律的には被疑者という立場にある。
千野は1月2日、静岡県沼津市のホテルの駐車場で、男性を轢き死亡させる事故を起こした。大々的に報じられたこの事故に、「人が1人死んでいるのに逮捕はされないのか?」という疑問を覚えた方も多かっただろう。
元東京地検検事の田中喜代重弁護士は語る。
「自動車運転過失致死傷罪の逮捕に明確な規定や決まりはありません。基本的には在所隠滅といって、逃亡の恐れがあって初めて逮捕されます」
実際、国家公安委員会の定める『犯罪捜査規範』でも、交通法令違反事件の捜査では「事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であっても、逃亡その他の特別の事情がある場合」以外は、被疑者の逮捕を行なわないよう注意がなされている。
しかしその一方で、自動車による死亡事故での逮捕例は多々ある。1月5日にも、神奈川県相模原市のコンビニの駐車場で車をバックさせていた65歳の女性が、90歳の女性をはね死亡させ、現行犯逮捕された。
一体、逮捕される基準となる「特別な事情」とは何なのか。前出・田中氏は次のように説明する。
「まず、信号無視やスピード違反、酒気帯びといった危険運転の類。それから、ひき逃げや警察の取り調べで嘘をいうなど、悪質と判断された場合も逮捕される可能性が高い。もちろん、被害者が死亡しているという事故の重大性も考慮されます。千野さんも逮捕されてもまったくおかしくはなかった。最終的には現場の警察官の判断次第です」
捜査員の判断に、彼女が「著名人」だったことが影響を与えた可能性があると語るのは、交通事故に詳しい長瀬佑志弁護士だ。
「著名人は逃げたりする恐れが少ないので逮捕されない場合が多い。それに、既に報道などで社会的制裁を受けたと判断されたかもしれない。『著名人だから逮捕されなかった』という見方も否定できないでしょう」
今後、千野は在宅のまま取り調べを受け、最終的には検察の判断を待つこととなる。起訴となれば、待ち受けるのは「7年以下の懲役、若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金」だ。
逮捕は免れても、眠れぬ夜は続く。
※週刊ポスト2013年1月25日号