憲法改正を掲げた自民党の安倍晋三政権がスタートし、憲法改正について議論が盛り上がることが予想される。そこで自民党の憲法改正草案について識者の考えを聞いた。ここでは、経済アナリストの森永卓郎氏の意見を紹介する。
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安倍自民党が提示した憲法改正草案の24条には、「家族は、互いに助け合わなければならない」という条文が追加されている。わざわざ憲法に書くようなことかと疑問をもつ内容だが、実はちゃんと意味がある。要するに、生活保護や年金などの社会保障を国に求めず、家族が面倒をみろと明言しているのだ。
自民党は高校の無償化や高速道路の無料化、子ども手当(児童手当)の削減を検討しており、今後、家庭負担の大幅増が見込まれる。この改正案には、憲法を改正したら社会保障をバッサリ切る狙いが隠されている。
安倍首相がやろうとしているのは、小さな政府を目指す小泉構造改革路線の継承である。
実は小泉元首相も安倍氏と同様に、就任当初は金融緩和を実施していた。一時的に景気を浮揚させて国民の支持を取り付け、財政のパイを大きくした後に、「痛みに耐えろ」と財政構造改革に突き進んだ。その結果、貧富格差が拡大したのだ。
安倍首相が力点を置いている景気拡大という名のバラマキは、その後にやってくる厳しい冬の時代を受け入れさせるための撒餌なのである。
※週刊ポスト2013年1月25日号