1月6日に初回が放送されたNHK大河ドラマ『八重の桜』。ヒロインの新島八重を演じるのは大河初主演となる綾瀬はるか(27才)だ。大阪城を「きれいなお寺」と表現するなど“天然”ぶりで有名な彼女だが、八重役はぴったりハマっていると、NHKエグゼクティブプロデューサーの内藤愼介さんが言う。
「今回のドラマでは等身大の女性が誠実に何かを信じて強くなる姿、それに周りの人々の協力が重なり合う姿を描きたかった。それに綾瀬さんはうってつけでした。彼女は持っている雰囲気で周りを温かくするので人が次々と寄ってくる。まさに八重のような女性なんです」
脚本を手がける山本むつみさんも、思い描いていた八重像は“女傑”というより綾瀬のようなチャーミングさを持った女性。今、山本さんの仕事机の前には綾瀬のカレンダーが貼ってあり、筆が進まなくなると、「頑張ろうね!」とその写真に声をかけるのだという。
歴史と伝統の大河ドラマであることに加えて、『八重の桜』には特別な意味がある。福島が舞台であることだ。前出・内藤プロデューサーが言う。
「3・11がなければこのドラマはありませんでした。今回の大河は面白いとか当たる内容よりも、“今やらなければならないこと”を最優先に選びました。タイトルの『桜』には、散る美しさではなく、来年また咲こうというポジティブな美しさを込めています」
東日本大震災から間もなく2年を迎えようとしている。しかし、被災地とそれ以外の地域の温度差は大きく開いていないだろうか。ドラマが注目されれば、福島や東北のことにも再び人々の目がいく。
「会津は今、“戊辰戦争以来の危機”といわれています。原発事故の風評で農作物は打撃を受け、観光客は9割減ったこともありました。八重の生き方には、負けたところから立ち上がるパワーを感じます」(会津若松市役所「八重の桜プロジェクト対策室」江川忠室長)
復興支援と、ドラマのエンターテインメントの両立。その実現は難しいが、山本さんはドラマの根本には、誰の胸にも響く大事なメッセージがあると考えている。
「人間は誰かが自分に何かをしてくれるだろうと思いがちですが、八重さんは家族や仲間のために自分が何をできるかを考えます。世界は自分のために用意されているわけではありません。誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、自分が動くことで世界は変わっていく。八重さんの生き方はそのことを教えてくれます」(山本さん)
※女性セブン2013年1月24日号