憲法改正を掲げた自民党の安倍晋三政権がスタートし、憲法改正について議論が盛り上がることが予想される。そこで自民党の憲法改正草案について識者の考えを聞いた。ここでは、八木秀次氏(高崎経済大学教授)の意見を紹介する。
* * *
自民党の改憲草案について、ネット上で「天賦人権説を否定している」と批判の声が上がっているが、私はむしろその点を評価したい。
天から人権が与えられるという考え方は、世界的に見れば亜流である。たとえばイギリスでは、自由や権利とはイギリス人が獲得した封建的な「特権」「祖先から引き継いだ相続財産」だと捉えられている。
ヨーロッパでは、権利は神から与えられたもので、義務や責任が伴うという考え方も根付いている。ところが日本では、権利に伴うはずの義務・責任・秩序・伝統が削ぎ落とされてしまった。
草案では、前文で「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」と始まることで、人権が歴史に根付いたものであることを強調する一方、12条では、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と明記した。明確に規定することで、人権が抽象的存在から具体的権利へと発展することになる。
※週刊ポスト2013年1月25日号