威勢良く覇権主義を唱える中国を動かす権力者たちは本音では戦争を望んでいない。なぜなら、中国の軍拡には限界があるからだという。ジャーナリストの富坂聰氏が中国の“アキレス腱”を指摘する。
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中国の軍拡ぶりを示すものとして、20年連続2ケタ増の軍事費がよく言及される。だが、中国だけが無尽蔵に軍事費を注ぎ込めるわけがない。経済成長に翳りが見え、高齢化が加速しているなか、「空母より年金を」という流れが出てくるのは時間の問題だ。すでに一部の知識人層からそうした声が上がっている。
昨年、中国政府は中国で働く外国人労働者から社会保障費を取ろうとした。それは中国がこれから公共事業の原資を必要とする一方で、社会保障制度の財源も必要としているからだ。その他にも教育、医療とカネがかかる分野は山ほどある。今後はこのような「民生」がキーワードとなる。
現在20歳の中国人は1992~1993年生まれだ。物心のついた頃である1990年代後半から中国経済は伸び始め、2000年以降は絶好調、そして今バブルを経験している。つまり、貧しい中国を知らない。
彼らはすでに「3K」を忌避している。そのため雇用が足りない状況にもかかわらず、工場の従業員定着率が低い。気にくわないことがあればすぐに辞めてしまう。自分たちの将来に対する危機感を持っていない。このままいけば中国は世界一わがままな人間の巨大集団になるだろう。そしてその先は「カネをよこせ」という話になる。
13億人から税金を集めたら莫大な金額になる。だからこれまで軍備の拡大が可能だった。しかし、当たり前のことだが、これから膨大な社会保障費を必要とするように、逆回転してバラ撒き始めれば際限なく財源が必要になる。そういった状況で軍拡を続けるには限界がある。
※SAPIO2013年2月号