東日本大震災から1年10か月。いまだ衰えぬ余震のエネルギーが、関東地方に巨大地震を起こす危険性を高めているという。政府が2年ぶりに公表した「全国地震動予測地図」から、危機の現実を検証する。
とくに注目されたのは千葉市と水戸市で、今後30年の間に「震度6弱以上の地震に襲われる確率」が、2010年に比べて急上昇している。千葉は63.8%から75.7%へと11.9%上昇し、水戸に至っては31.3%から62.3%へと2倍近くに跳ね上がっている。
これは12月21日に政府の地震調査研究推進本部が公表した「全国地震動予測地図」(以下、「地図」)の2012年版に記された数字だ。
2011年版は東日本大震災の影響で見送られたが、2009年、2010年にも発表されていた。そして今回の予測地図は、「3・11」を機に大幅に見直されたものだという。なぜこれほどまでに確率が上がってしまったのか。
「地図」を公表した文部科学省研究開発局地震防災研究課の担当者は、その理由をこう説明する。
「今まで想定されていた最大級の地震は、過去に起きた最大の地震と同程度と考えられていました。しかし、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災の原因となった地震)は、予想を超える大きなものでした。
今後は、房総沖や茨城県沖でも今まで想定されてこなかった地震が起こる可能性もあると判断し、最大地震をこれまでのM7からM8まで引き上げました。その分、千葉や水戸で予想される震度が大きくなるとも言えますので、震度6弱以上の地震が発生する確率が高くなったのです」
房総沖や茨城県沖には地震を発生させるエネルギーが溜まっていると、武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀さんは言う。
「北海道から千葉県にかけての太平洋沖はプレートの運動でエネルギーが溜まりやすく、たびたび地震が発生します。三陸沖から福島県沖にかけては、東日本大震災とその後の余震で、蓄積されていたエネルギーが大きく解放されました。しかし、その南隣は巨大地震が発生せず、エネルギーが蓄積された“空白域”になっています。房総沖や茨城県沖で地震が起こりやすくなっているのは確かです」
地震には海溝型と内陸直下型の2通りあるが、ここで問題となっているのは東日本大震災と同じ海溝型の地震だ。海溝型の地震とは、地球を覆うプレートとプレートがぶつかるところで起きるもの。日本列島の東側で東西からぶつかる北米プレートと太平洋プレートの間で起こる地震がM8以上の規模になることもあり、津波が発生する危険性が高いのだ。
M9を記録した東日本大震災では死者1万5878人、行方不明者2713人(12月19日現在)もの犠牲者を出したが、その多くは秒速8mで押し寄せた高さ20m超の巨大津波によってさらわれた人たち。今回、千葉・水戸に震度6弱以上の揺れをもたらす地震の規模はM8と想定されており、東日本大震災に匹敵する巨大津波が首都圏を直撃することもありえる。
「房総沖もしくは茨城県沖の震源の浅い地点でM8の地震が発生した場合、東日本大震災と同程度の津波による被害が予想されます。実際に起こってみないとわからないことが多いのですが、高さ数m以上の津波が沿岸部の都市を瞬く間にのみ込むことになるでしょう」(前出・島村さん)
今からおよそ300年前に房総沖を震源とするM8前後の大地震が発生している(元禄関東地震)。この時の死者は1万人。もし同規模の地震が起きれば、「人口が当時に比べてはるかに多いため、被害は元禄関東地震の20~30倍以上になりかねません」と島村さんは警告する。
※女性セブン2013年1月24日号