みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、弔辞について考える。
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葬儀に欠かせないもののひとつに、弔辞がある。
なにしろ弔辞といえば人生のオチ。映画でいえばクライマックスのようなものだ。クライマックスの出来いかんによって映画はその評価が決まるように、人の人生も弔辞の出来いかんで評価が決まる。私は絶対にそう思っている。
最近の弔辞で一番印象に残っているものといえば、なんといっても赤塚不二夫さんの葬儀(2008年8月)でのタモリさんの弔辞だ。
すべてがアドリブだったという衝撃的な事実を抜きにしても、あの素晴らしい弔辞で語られた内容が、すでに名声の高い赤塚不二夫という人間を神格化させたとすら思う。
ここで、著名人の弔辞の例を紹介しよう。
【著名人弔辞リスト】 ※故人(弔辞を読んだ人)の順
■中村勘三郎(大竹しのぶ、野田秀樹など)
■安岡力也(内田裕也)
■横山やすし(横山ノック、西川きよし)
■市川森一(西田敏行)
■森繁久彌(松岡功・東宝名誉会長)
■渥美清(倍賞千恵子)
■植木等(小松政夫)
■荒井注(いかりや長介)
■いかりや長介(加藤茶)
■坂上二郎(萩本欽一)
■美空ひばり(中村メイコ)
■逸見政孝(山城新伍)
■赤塚不二夫(タモリ)
■芥川龍之介(菊池寛)
■夏目漱石(芥川龍之介)
タモリさんの弔辞に限らず、有名人の弔辞はどれも感動的である。
石原裕次郎(1987年)への弔辞は、あの勝新太郎が読んでいる。そこで勝新は、裕次郎のことを、
「兄弟!」
と呼んだ。あの迫力でそういわれた日にゃ、葬儀会場にいる列席者、みんなゾクッとしたでしょう。心からグッときたでしょう。
渥美清(1996年)の葬儀で弔辞を読んだのは、『男はつらいよ』で、渥美清演じる寅さんの妹を演じていた倍賞千恵子だ。
「私もみんなも『お兄ちゃん』とか『アニキ』って呼べなくなっちゃったのよ。それ本当に哀しいし、寂しいよ」
『男はつらいよ』を見ていた誰もが、本当に死んじゃったんだ、寅さんが……と感動を超え慟哭するようなセリフである。
いかりや長介の葬儀(2004年)における加藤茶の弔辞も素晴らしかった。
「(今は無理だが)多分そのうち本当に全員集合になるかもしれないけど」
このセリフを聞いた誰もが“その全員集合は豪華だけれど、今はまだ早すぎる!”と、故人の死を悲しみつつ、同時にドリフの偉大さを再認識したに違いない一節だった。
人生の最後にこんな感動を呼ぶ弔辞を、自分の葬儀のときにも読んでほしいと思うのが普通だと思いませんか?
※週刊ポスト2013年1月25日号