前立腺がんは高齢化により患者数が増えている。アメリカでは男性の固形がん(形のある臓器に塊となって発生するがん)の1位で、日本は現在4位だが、2025年には罹患数は1位になると予想されている。血液検査で腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)値を調べることで早期発見が可能だが、がんリスクの高まる50代以上の男性の約10%しか検査を受けておらず、前立腺がんの約20%は、骨に転移した進行がんで発見される。
横浜市立大学附属病院泌尿器科の上村博司准教授に話を聞いた。
「PSA値検査導入前は、初期診断で50%が骨転移している進行がんでした。実際には腰痛や足などの麻痺症状で整形外科を受診して、前立腺がんが発見される例がかなりありました。前立腺がんだけでなく、甲状腺がんや乳がんなどホルモン系のがんは骨転移しやすい特徴があります」
前立腺がんでは骨盤に最初に転移することが多く、次第に脊椎にまで広がる。骨のそばには神経も通っており、腰痛や痺れ、骨折や運動麻痺といった症状が現われ、ある日突然、歩けなくなることも多い。しかも、骨転移した進行がんは再発率が高く、生存率も平均で40か月と短い。
前立腺がんの治療は、初期では手術や放射線など複数の選択肢があり治療効果も高い。しかし、進行がんはホルモン治療しか選択肢がなく、当初は効果があっても2~3年で再発する。近年、ホルモン治療と骨病変治療薬を併用することで骨転移の進行を抑制し、再発期間を延ばす治療が実施されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年1月25日号