「こんな見事な死に方があるんだ、あっぱれ、やられたという感じです」──。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)で共演していた「尾木ママ」こと尾木直樹さん(66才)は東京タワーを見るたびに、その足元で眠る金子哲雄さん(享年41)を思い出すという。尾木さんは、実は金子さんを「師匠」と呼んで慕っていた。
「訃報は、移動中の新幹線の中で知りました。『ウソでしょ?』って思って、それでびっくりして、すぐにブログに第一報を書き込んだんです」
尾木さんはブログにこう綴っている。
〈実は嘘なんですよねーってあの独特の少し長い舌回しでさんまさんに絡んで欲しい。黙ってひとりで逝くなんて水くさいじゃないか…〉
「サーバーがダウンしました。1日でアクセスが100万件を超えたんです。皆さん、同じように、金子さんのことをすごいと思い、慕っていたんですね…」
尾木さんにとって、金子さんはテレビ界の師匠だったという。2010年に『ひるおび!』(TBS系)で共演してから急速に親しくなった。
「『尾木ママ』としてテレビに出始めてからまだ間もなくて、いろいろわからなくて困っていたら手を差し伸べてくれたのが金子さんなんです。親身になって、事務所に入った場合はこうなるとか、この仕事は絶対に受けたほうがいいとか、それこそ、ギャラの話まで丁寧にしてくれた」
金子さんは、尾木さんの“同志”でもあった。
「私も『臨床教育学』の研究者を名乗っていますが、それは『現場』を大事にしたいという思いから。文科省が『いじめた生徒を出席停止にすればいい』というようなことを言い出しましたが、現場を見ていたら出てこない発想なんです。金子さんも現場主義だった。経済学の理論を振り回すのでなく、“スーパーの売り場はこうなっている、だからこうなんだ”と常に言っていました」
ちゃんと現場を見なくてはだめなんだということは尾木さんと金子さんの信念だった。
「2011年の年末にスタジオで会ったときもおかしいな、と感じたんです。顔色が本当に悪くて。それを言ったら『今日はピンクのシャツで映えるようにしてきたんです』って。もっとちゃんと受け止めなきゃならなかったんだけど、笑いながら言うもんだから、まあ若いんだし、すぐ治るだろうと思ってしまって…」
だが、明けて3月、金子さんは体調が悪化、肺気胸の手術により、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)の沖縄ロケの参加をとりやめる。
「当日、沖縄に行ったら金子さんがいないんです。スタッフが『風邪だ』と。でも、あのかたはそんなことで仕事は休まない。これはおかしいぞって確信しましたね」
金子さんはその時の心境を自著『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小社刊)の中でこう記している。
〈見ると悲しいから、iPadから沖縄ロケのスケジュールを消した。それから4日間、目を開けている間は泣き続けた〉
「朝早い番組のある日によく都内のホテルに泊まるんですが、窓から東京タワーが見えるんです。金子さんの好きなオレンジ色に輝くタワーが」
金子さんは今、自ら選んで決めた、東京タワーの足元、東京・港区の心光院に眠っている。
「いわゆる終活っていうのがブームになってきているけど、自分の整理だけでなく、残された者のなかに元気とパワーを与えていく、金子さんのようなエンディングができるかたは、めったにいないでしょう」
※女性セブン2013年1月31日号